2017 Fiscal Year Annual Research Report
Borders in Global Relations
Publicly Offered Research
Project Area | Establishing a new paradigm of social/human sciences based on rerational studies: in order to overcome contemporary global crisis |
Project/Area Number |
17H05120
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
岩下 明裕 九州大学, 大学院法学研究院, 教授 (20243876)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ボーダースタディーズ / 社会構築 / 透過性 / 境界付け / 領土 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、グローバル化に関する諸問題を地域横断的に多様なディシプリンを用いて行うのみならず、境界を越え、世界規模で起きる現象の追跡と分析に目配りしつつも、重層的なグローバル化のもとで、絶えず消失し、再生される空間及び人と人の相関における領域化や境界付けを総合的に把握しようとするものである。本研究では、一見グローバル化とはネガの関係に見えるボーダー(境界)の問題群がグローバル化とコインの表裏の関係であることを前提に、旧来の研究視座では読み解くことのできない問題群と本質を逆照射し、かつ実践的な解析や対応策を見出そうと努めようとする。1)アジア・ユーラシアの境界事象(再領域化・囲い込み)とグローバル化した世界の相関を分析し、2)グローバル化するborderization とtrans-borderizationの相関を地域間比較によって試み、3)グローバル化と境界問題の理論的総合を目指す、という課題設定がそれである。 初年度にあたる平成29年度は上記の設定にかんがみ、本新学術領域研究で展開されている諸研究を鳥瞰し、それにコメントを加える形で理論的な問題を抽出してきた。とくにアジア・ユーラシアにおける北東アジア部における流動性が欠如し、また領土問題に代表されるようにborderizationの傾向が強いこと、それまで比較的に陸域が安定し、流動性が高いとみられてきた南アジアでもブータンをめぐる中印対立の激化によりre-borderizationが起こり、旧来、海にシフトしていたと思われた紛争域が陸域に回帰し始めたことなどが本研究を通じての新たな発見となった。さらなる地域間比較として北米・中米における諸問題を同様の視座から分析しつつ、最終年度の理論化にむけた素材を収集することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度ということもあり、前半は本新学術領域研究の総括班会議、全体集会および関連セミナーに積極的に参加し、本領域研究の全体把握とその理論的整備のためのテーマと材料の収集に努めた。本公募研究が新学術研究全体を束ねうる理論的貢献を行うことを掲げていたため、このような取り組みは順当ともいえる。夏場のセミナーの折に開催されたシンポジウムでは新学術研究全体の理論的取り組みについてボーダースタディーズの観点から報告コメントを行った(7月開催)。 後半は公募研究の独自性を高めるべく、九州大学をベースに各種セミナーを開催し、北東アジア、南アジアなど地域を超えた知見の収集に努めた(12月・1月にそれぞれ国際会議を開催)。また北米・中米の研究者との共同研究を組織し、メキシコ・グアテマラ国境および、キューバと米国の境界をめぐる透過性と社会構築、これが国際関係に与える影響などを現地調査した(12月実施)。 これらの成果は米国ワシントンのセミナーや国際学会Association for Borderlands Studiesの大会などで報告され、成果は研究コミュニティと共有されつつある。 このような状況をかんがみ、研究はおおむね順調に進展しているとみなされる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は最終年度にあたるため、現地調査のみならず、理論的な貢献が不可欠である。代表者の狙いは、一つ一つの地域の問題群を、他地域の類似のそれと比較し、相関性を位置づけることにある。そのツールとして、ボーダースタディーズのもつ、構築、透過性、タイムランの3つの枠組みが用いられるのだが、7月にウィーンとブタペストで開催されるAssociation for Borderlands World Congressでまず仮設の提示を行い、それを受け、7月後半にブレスベンで開催される国際政治科学学会の場で、本学術領域研究の代表である酒井啓子氏らとともにパネル報告を行う。9月には社会科学フォーラムWSSF世界大会の福岡開催の際に、基調パネルを組み、その成果を世界で共有する。 以上のインタラクションを経て、年度後半にグローバル国際社会における相関の理論的課題に対してボーダースタディーズの立場からみた仮説を提示する。 現時点では特に研究遂行上の問題はなく、当初のプラン通り、計画を遂行する。
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