2017 Fiscal Year Annual Research Report
Study on Palaeolithic Aminal Bones by Protein Archaeology
Publicly Offered Research
Project Area | Cultural history of PaleoAsia -Integrative research on the formative processes of modern human cultures in Asia |
Project/Area Number |
17H05130
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
中沢 隆 奈良女子大学, 自然科学系, 教授 (30175492)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | タンパク質考古学 / 動物骨 / コラーゲン / 西アジア / 旧石器時代 / 新石器時代 / 古代文明 / 質量分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、主に西アジア地域の発掘調査で採集された動物骨のコラーゲンのアミノ酸配列解析を行った。特に、新石器時代のアゼルバイジャンのギョイ・テペ (資料番号を“Goy”で示す)およびハッジ・エラムハンル・テペ(資料番号を“Hac”で示す)で発掘されたヒツジまたはヤギの骨、Goy-4、Goy-6、Goy-9、Hac-7などについては、既に形態観察とミトコンドリア(mt)DNAによる予備的な同定が行われ、その結果Goy-4はヤギ、Goy-6とGoy-9はヒツジと判定されている (Kadowaki, S. et al. 2017)。未だmtDNAの解析結果が得られていないGoy-6については、今回のアミノ酸配列解析の結果からヒツジに特異的な配列(ウシおよびブタと一致するがヤギおよびシカとは2残基に変異をもつα2鎖934-966残基のペプチド)を確認し、形態観察と一致する結果を得た。資料Hac-7は形態観察からはヒツジ、mtDNA分析ではヤギと、異なる同定結果が得られていたが、Hac-7から抽出したコラーゲンのトリプシン分解物の中から、アミノ酸配列がヒツジに特有 の配列AGEVGPPGPPGPAGEK(α1鎖918-933残基)を持つペプチドを発見したことにより、形態観察の結果が支持された。Hac-7の質量分析においてコラーゲンの質量分析とmtDNAの塩基配列解析と異なる結果を得た原因として、種の判定に使うmtDNAの塩基配列が同一の動物種の中でも異なるために必ずしも動物種を正確に反映せず、互いに似通ったヒツジとヤギのmtDNAが増幅の過程で混同される可能性もあることなどが考えられる。 このほか、イランのムシュキ遺跡(6000 BC)のガゼルの骨を分析した結果、同じウシ科のウシとは異なるアミノ酸配列をもつペプチドを発見し、質量分析によるアミノ酸配列解析の有用性を示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
計画当初は、古代の動物骨や皮革から抽出した膠のコラーゲンを対象として、質量分析によるアミノ酸配列解析を行い、動物種を同定する、および同定するための新しい方法を開発することが目的であった。昨年度から共同研究として始めた旧石器時代から新石器時代にかけての動物骨の種を同定するための研究で、I型コラーゲンのα1鎖とα2鎖の全2000残基におよぶ配列中、わずか4残基のみが異なるヤギとヒツジを区別する必要が生じた。形態観察の結果、既にヤギまたはヒツジであることがほぼ確実な資料とともに、小さな破片状で形態からは判別できない資料まで、通常の質量分析法にペプチドの末端アミノ酸の化学的標識法を駆使した結果、問題の4残基中3残基を含むペプチドが検出できたため、すべての資料の動物種の判定に成功した。このほか、同様な手法により、考古学資料でしばしば問題となる同一種に属するウシ、シカ、ガゼルのコラーゲンについても、いくつかのマーカーとなるペプチドを検出することができた。これらの成果により、約1万年前の動物骨については形態からの種の判定が不可能で、DNAが完全に失われた資料でも、コラーゲンが残存していれば、質量分析によって動物種の判定が可能であることを実証した。この点において、本研究が「当初の計画以上に進展している」と判断した。 また、本新学術領域の研究会やA02班内の議論において、骨以外に歯のエナメル質にもコラーゲンが長期間残存している可能性が示唆され、さらに歯石にもコラーゲン以外に当該動物の摂食行動を反映するタンパク質が残留している可能性が出てきた。本研究が分析対象とする考古資料は、当初の計画では骨に含まれるコラーゲンにほぼ限定されていたが、こうして人類の行動により直接的に関係する可能性の高いタンパク質を分析対象とすることによって、新人文化形成プロセスの研究の推進により深く貢献できると期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までに海外からのタンパク質を含む考古学資料は数だけでなく年代や地域についても予想以上の広い範囲で集まっている。また、これまでの膠や骨などのコラーゲンに加えて歯や革紐など、新たに試料の抽出法と調製法を個別に確立して対応することが必要となった。さらに、資料の数量の増大に伴って、分析操作が複雑で解析に長期間を要する年代の古い(1万年以上前の動物骨や極端に量が少ない壁画片など)も増えている。これらの困難に対応するために、分析方法の改善と新たな実験方法の開発は、当初の計画通り進めなければならない。具体的には質量分析の感度向上のためのペプチドの化学修飾法の開発と、コラーゲンに特有の問題である、ヒドロキシプロリン(Hyp, 113.0582 Da)と質量がほぼ等しい113.0946 Daのロイシン(Leu)とイソロイシン(Ile)を化学的に区別するための方法の開発を進めたい。後者の問題は、高分解能の“Orbitrap”のような質量分析装置によってHypとLeu/Ileの違いが識別できるまでに装置の性能が向上しているが、本研究ではより汎用性の高いMALDI質量分析装置で容易に区別する方法の開発により対応したい。また、考古学資料中のコラーゲンのトリプシン分解物は、液体クロマトグラフィー(LC)分離で無数のピークの中からコラーゲン由来の極めてわずかな数のペプチドを探し出さなければならないという問題が存在する。この問題に対応するために、上記の化学的方法と現有のLC-ESIおよびMALDI質量分析装置を組み合わせた新しい分析方法を確立したい。 得られた分析データは、本新学術領域研究の計画班A02内において得られたmtDNAの塩基配列解析をはじめ、現在共同研究を実施している海外の研究者を含む領域内外の研究者による他の方法で得られた結果と詳細に比較し、領域の研究の推進に貢献したい。
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Research Products
(8 results)
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[Presentation] Characterization of degradation profile of collagen in archaeological specimens by mass spectrometry2017
Author(s)
Karino, M., Kawahara, K., Kadowaki, S., Taniguchi, Y., Tsuneki, A., Moini, M., Nakazawa, T.
Organizer
64th ASMS Conference on Mass Spectrometry and Allied Topics
Int'l Joint Research
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[Presentation] Mass spectrometry of collagen in 8,000-year-old animal bones to characterize deterioration2017
Author(s)
Karino, M., Ito, Y., Inuduka, M., Kadowaki, S., Nishiaki, Y., Nakazawa, T.
Organizer
ConBio2017 (Consortium of Biological Sciences 2017) 90th Annual Meeting of the Japanese Biochemical Society