2017 Fiscal Year Annual Research Report
層状分子磁石における動的π造形による物性制御
Publicly Offered Research
Project Area | pi-System Figuration: Control of Electron and Structural Dynamism for Innovative Functions |
Project/Area Number |
17H05137
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
宮坂 等 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (50332937)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | πー集積型錯体 / 層状分子磁石 / 動的π造形 / 分子吸脱着 / 磁気ーイオン制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
(I) 酸素常磁性を介した三次元磁気秩序のスイッチング:電子ドナーである水車型ルテニウム二核(II, II)錯体([Ru2II,II])とTCNQアクセプターの反応により得られる一電子移動D2A型層状磁性体のいくつかは、層間の結晶溶媒を放出しても安定な多孔性のD2A型層状磁性体を生成する。層状磁石のような低次元系の磁性体の磁気転移は、その層構造と層間の磁気的相互作用に極めて敏感であり、僅かな構造変化などで劇的に相転移温度を変える。最近、一般的なガス分子(N2, CO2, O2)を吸着する多孔性層状磁石を見出し、反磁性種であるN2やCO2の吸着では、フェリ磁性相転移温度が20 K程度上昇し、一方、常磁性O2では、低圧でTCの上昇、高圧で反強磁性相に変換することが明らかとなった。O2の場合、高圧で常磁性のO2、S = 1を介した反強磁性相転移であると結論づけられた。これは吸着酸素を介した磁気相転移であり、このような例は初めてである。本系が酸素のSOMOスピンを介した長距離磁気秩序であることを証明するため、ガス下精密粉末X線回折を測定し、構造転移が磁気秩序と無関係であることを証明した。また、酸素導入により反強磁性体転移を起こす多孔性磁石を見出した。 (II) 分子吸着による中性―イオン性転移のスイッチング:電子ドナー(D)とアクセプター(A)からなる一次元集積体における中性―イオン性転移(N-I転移)は、温度や圧力などの外部刺激によって物性を制御できる点で興味深い現象である。しかし、磁気相関や電子相関を持つ共有結合型DA一次元鎖はこれまで当研究グループが報告した一例のみであり、新たな物質開発や物性制御法の確立が課題であった。今回、我々は水車型Ru二核(II, II)錯体とTCNQ誘導体からなる新規鎖状集積体を合成し、これらが一段階のN-I転移を示すことを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
「酸素分子のSOMOπ軌道を介した磁気秩序のスイッチング」や「溶媒吸脱着による中性ーイオン性転移スイッチング」など、「動的π造形」、「動的スピン」のコンセプトに立脚した新たなスイッチング現象を示す物質系の開発に成功した。これらは、全て世界初の化合物例および現象であり、極めて興味深い物質である。このようなコンセプトを展開すれば、今後多くのスイッチング物質の設計が可能であると思われ、当初の方向性をより確実なものにした。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)細孔内に固定されたガス分子を含む単結晶構造解析:ガス導入時に劇的に磁気相が変換する多孔性磁石が最近次々と見つかってきた。それらの幾つかは、ガス導入時でも単結晶形状が保たれており、ガス下単結晶構造解析が可能であるかもしれない。π造形を確認するには、構造を明確にすることが不可欠である。それらの精密構造を確定することで、ガス導入により磁気相が変換する機構を解明する。 (2)電子・イオン挿入によるπ系磁気経路のスイッチ(電気化学的手法):新しい物質系として、金属―クロラニル多次元格子化合物に注目している。既に幾つかの化合物は既報であるため、それらの化合物をプロトタイプとして分子設計と電子状態設計を行い、新規化合物を開発する(最近、新しい化合物を見出した)。クロラニル架橋部位が中性であるものを開発し、Liイオン電池セルによるin situ磁気測定を行う。
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