2017 Fiscal Year Annual Research Report
Theoretical study for thermal generation of new spin currents
Publicly Offered Research
Project Area | nano spin conversion science |
Project/Area Number |
17H05174
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
佐藤 正寛 茨城大学, 理学部, 准教授 (90425570)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | スピントロニクス / 磁気光学 / 熱磁気効果 / 熱ホール効果 / キタエフスピン液体 / マグノンペア / トポロジカル光波 / フロケ理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度は、主に(1)スピンゼーベック効果をはじめとする磁性体における新しい熱磁気効果について実験家との共同研究、(2)フラストレート磁性体におけるマグノンペアの熱ホール効果についての理論研究、(3)トポロジカル光波による超高速磁性制御の理論的提案、(4)熱浴の効果を取り込んだ周期外場中の量子系における非平衡定常状態とその物理量についての理論研究、という4つのテーマに焦点を当て研究を遂行した。特に、(1)では、マグノン(スピン波)以外の磁気励起による質的に新しいスピントロニクス機能を探索している。その結果、本新学術領域A04班との共同研究により、キタエフ型のスピン液体候補物質の1つであるalpha-RuCl3の熱伝導を測定し、理論的に予想される交換相互作用と同程度の温度領域でalpha-RuCl3の磁気励起(遍歴マヨラナ粒子)由来と思われる熱伝導度を抽出することに成功した。さらに、現在、マグノンペア励起が現れるフラストレート磁性体LiCuVO4のスピンゼーベック効果の実験理論の共同研究を進めている段階である。
2017年度の本研究課題と関係する出版論文として、(a)alpha-RuCl3の熱伝導についての論文(Physical Review B(R); Editors' Suggestions)、(b)光渦レーザーの軌道角運動量の磁性体への転写についての論文(Physical Review B(R))、(c)スピン軌道相互作用を持つ1次元トポロジカル絶縁体における磁気共鳴を利用したエッジ状態の検出方法についての論文(Physical Review B)が挙げられる。これら以外にも、上記(1)-(4)研究に関する論文作成が順調に進んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の目標は、新しいスピントロニクス機能や角運動量の形態の変換についての微視的な理論を構築し、スピントロニクス分野と量子磁性分野を融合した新しいスピン科学領域を形成してゆくことにある。「研究実績の概要」欄の説明から分かるように、この目標に合致する多数の研究が着々と進んでいることから、研究は予定通り順調に進んでいると言うことが出来る。
また、本新学術領域の理論及び実験グループメンバーとの議論を通じて、多様な新しいアイディアの種が得られており、2018年度の研究進展も十分に期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度は、「研究会用の実績」欄に示した2017年度の主な研究テーマ(1)-(4)をさらに押し進めるとともに、これらと関連する新しい研究を遂行する予定である。特に「フラストレート磁性体LiCuVO4のスピンゼーベック効果におけるマグノンペア励起の効果」「レーザー中の磁性体における磁気共鳴のフロケの定理に基づく理論構築」「トポロジカル光波の1つであるベクトルビームによる新しいスピントロニクス機能の提案」を中心課題とする予定である。
これらの研究を効果的に推進する上で、新学術領域の、さらにはそれ以外の研究者と多くの議論の場を積極的に設けるつもりである。また、本新学術領域の中で、本研究課題代表者がこれまであまり触れてこなかった研究テーマに携わっている研究者の方々と積極的に議論をすることで、新しいアイディアが得られると考えている。特に、本研究課題のキーワードである「熱」や「光」に関わる研究者は国内だけでも広く分布しており、これらに関わる研究者との議論が重要と考えている。
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Research Products
(10 results)