2017 Fiscal Year Annual Research Report
偏光もつれ光子対から電子スピン対への量子もつれ相関の転写技術の開発とその実証
Publicly Offered Research
Project Area | nano spin conversion science |
Project/Area Number |
17H05177
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松尾 貞茂 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (90743980)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 量子状態転写 / GaAs量子ドット / 量子もつれ相関 / もつれ光子対 |
Outline of Annual Research Achievements |
光子電子スピン変換系は量子中継器への応用だけでなく、異種量子ビット間の変換やもつれの研究を行う舞台として魅力的である。本研究では、単一光子偏光から単一電子スピンへの量子状態転写の実証、もつれ光子対から電子スピンと光子偏光との異種量子ビット間のもつれ状態の実現、さらにもつれ光子対から電子スピン対への量子状態転写の実証を目標としている。 まず、昨年度得られた光学スピン閉塞効果を用いた量子状態転写の実証実験において、ゼーマン分裂した軽い正孔の高エネルギー側での量子状態転写の実験証拠が不十分であったため、より高精度な読み出し手法(二重量子ドットでのスピン閉塞効果を用いたスピン読み出し)を用いて単発での量子状態転写の観測実験を行った。その結果、生成されるスピンが光偏光に依存しており、それが量子状態転写から期待される相関を持つことが明らかになった。これらの結果により、単一の光子偏光から電子スピンへの量子状態転写が実証された。 加えて、ドットスピンと偏光とのもつれ相関の生成実験のため、もつれ光子対のエネルギーの狭帯域化を行った。具体的には半値幅の狭い(3 nm)バンドパスフィルタで狭帯域化を行い、これにより減少したもつれ光子生成率を向上するためパルスレーザーの時間幅をピコ秒から100フェムト秒へと短パルス化した。これにより、昨年度の電子光子対の生成実験の際に用いたもつれ光子対の同時検出効率10 kHzと同程度の同時検出効率(3 kHz)を持つ狭帯域のもつれ光子対源の生成に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
単一光子から単一電子への量子状態転写はゼーマン分裂した軽い正孔の高エネルギー、低エネルギー状態それぞれに対して異なる手法により実証した。これにより、一つ目の提案は実現された。 また、もつれ光子対から光子偏光-電子スピンへと量子もつれ相関を転写する実験に関して、上記の単一偏光スピンの量子状態転写が実証されたこと、これまでに光子対から電子と光子の対が生成され、その同時検出にも成功していることから、間接的には量子もつれ相関が光子対から偏光-スピンの対への転写が実証されたといえる。より直接的に上記のもつれ相関の転写を実証するために必要なもつれ光子対の狭帯域化にも成功した。これは、本研究計画だけでなく、光子対からスピン対への量子状態転写の実証にも必須の技術であり、これが達成されたことは非常に大きな前進である。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、光子対から電子スピン光子偏光の対へと量子もつれ相関が転写されていることを実証する研究では、実際に狭帯域化したもつれ光子対源を用いて片方の光子を量子ドットに照射してそのスピンを単発読み出しにより測定し、同時に検出される光子偏光の測定を行う。この相関を検証することにより、直接的にもつれ光子対から光子と電子へと量子もつれ相関が転写されたことを実証する。 さらに、光子対から電子対へのもつれ相関の転写に関しては、二重量子ドットへ本年度生成したもつれ光子対の二つの光子を共に照射し、二つの電子が同時に生成される事象の測定をまず行う。その後、スピンの単発読み出しにおいて使用している二重量子ドットでのスピン閉塞効果の実時間測定により生成された電子の持つスピン間の相関を測定しs、もつれ相関が転写されていることを実証する。このために必要となる実験技術として、光子対から出る二つの光子を同一光軸上にのせることがあげられる。これをまず実現するため、来年度の上半期は光学系のさらなる改善に取り組む
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