2017 Fiscal Year Annual Research Report
メタルスカベンジャーによる液体シンチレータ検出器の極低放射能化
Publicly Offered Research
Project Area | Revealing the history of the universe with underground particle and nuclear research |
Project/Area Number |
17H05191
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
清水 格 東北大学, ニュートリノ科学研究センター, 准教授 (10400227)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 低放射能化技術 |
Outline of Annual Research Achievements |
ニュートリノや暗黒物質が関わる希少事象探索は、宇宙・素粒子の未解決問題を解き明かす鍵となっていると考えられており、神岡地下で進行する極低放射能環境を活用した実験的研究の重要性が高まっている。新しい純化手法の候補として、有機合成分野において近年開発が進んでいるメタルスカベンジャー(金属捕捉材)による吸着法が挙げられる。 本研究では、これまで小規模装置で開発を行ってきたメタルスカベンジャーによる放射性重金属の吸着純化技術をさらに発展させ、十分な純化速度が得られる液体シンチレータ純化装置の製作・稼働を行い、液体シンチレータ検出器における主要なバックグラウンド源に対する除去率を評価する。これまでの研究において小規模な装置を構築し、5社12製品の試薬に対して鉛の吸着除去試験を行ったところ、シリカゲルにアミノプロピル基を付けたメタルスカベンジャーが吸着剤の候補として有力であることが分かった。実機の純化では液体シンチレータを吸着剤入りのカラムに連続して送り込むカラムプロセスによる吸着純化が必要である。小規模装置の基本設計を変えずに大流量での純化に対応するため、直径10 cmの直管型吸着カラムを製作した。これまでに開発中の液体シンチレータの主成分であるリニアアルキルベンゼン(LAB)に対して純化試験を行ったところ、LABの流量は130 L/h程度で安定しており、目標の流量をほぼ達成していることが分かった。光透過率や発光量などの液体シンチレータに対する吸着純化の影響は無く、鉛除去については1回の通液によって92.9±0.6%の除去率を達成し、小規模装置での小流量における除去率(約94%)を再現することを確認している。このことはカラムを通過するLABの線速度を変えなければ、メタルスカベンジャーに対する鉛の吸着効率は変化しないことを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の目標であるメタルスカベンジャーを用いた液体シンチレータ純化装置の製作と性能評価を目標としていたが、発光量・透過率など液体シンチレータの性能への影響が無いこと、送液する液体シンチレータの圧力・流量を安定に維持できること、鉛に対して小規模装置と同程度の除去効率が得られることなどの性能評価が完了した。当初の予定よりも順調に研究が進んだため、来年度の計画を一部先行して実施している。
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Strategy for Future Research Activity |
小規模装置ではさらに純化を繰り返すことで最大98%の除去率を達成しており、今後はLABの自己循環の回数を増やしタンク内に残留する鉛をどこまで低減できるか検証する予定である。さらに、純化条件を最適化することで金属除去率を高め、大容量液体シンチレータのための純化装置稼働に向けた実証試験を行う。
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Research Products
(8 results)