2017 Fiscal Year Annual Research Report
MEMS技術を用いた低雑音・高空間分解能なガス飛跡検出器に向けた基礎開発
Publicly Offered Research
Project Area | Revealing the history of the universe with underground particle and nuclear research |
Project/Area Number |
17H05199
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高田 淳史 京都大学, 理学研究科, 助教 (90531468)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ガス検出器 / 暗黒物質探索実験 / MEMS技術 |
Outline of Annual Research Achievements |
ガンマ線検出器や中性子検出器として開発されてきたマイクロピクセルガス検出器μ-PICは、微細な電極構造により荷電粒子の詳細な飛跡の観測を可能とする。このμ-PICを低圧のガスの下で動作させることにより、100 keV程度の原子核反跳の飛跡も観測可能となる為、暗黒物質探索にも用いられている。一方で、これまでのμ-PICはプリント基板技術を用いて製作されており、ハンドリングし易い様に基板の形状保持力を上げる為、ガラス繊維を基板内部に入れてある。暗黒物質探索実験では、このガラス繊維内部のU/Th系列の天然放射性同位体が雑音減となっており、感度を制限していることが報告されていた。 プリント基板技術μ-PICに代わるものとして、成長著しいMEMS技術を用いたμ-PICの開発を始めている。このMEMS μ-PICには、雑音減となるガラス繊維が含まれない。このため、暗黒物質探索実験用として使用が可能であるか、その材料に含まれる放射性同位体の量をGe検出器を用いて測定を行った。その結果、基板材料中に含まれるU/Th系列の放射性同位体は0,02ppm未満であり、30 cm角のMEMS μ-PICを用意しても大きな雑音減とはならないことが確認できた。 これを受け、5 cm角サイズのMEMS μ-PICを製作し、その性能評価を行った。得られたガス利得は、これまで試験に用いてきた1 cm角のMEMS μ-PIC同様、プリント基板技術μ-PICの約2倍の利得が得られた。これは、基板材料の厚みが厚くなったために、陽極まわりの電気力線がより集中し、なだれ増幅が大きくなったためである。その一方、予想されたよりもエネルギー分解能の一様性は良くないことが確認された。この点については続けて調査を行っていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MEMS技術に基づくμ-PICの材料に含まれる放射性同位体の量の測定を予定通り終えることができた。また、検出面積を5×5 cmに拡大したMEMS μ-PICの性能評価を行い、ガス検出器として動作すること、従来のプリント基板技術μ-PICよりも高いガス利得を得られることが確認できた。一方で、エネルギー分解能については再調査が必要となっている。従って、おおむね順調に低雑音なガス検出器の開発が進んでいると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
MEMS技術の特徴として、プリント基板技術よりも高い精度での電極形成が可能な点が挙げられる。このため、従来のプリント基板技術μ-PICよりもガス利得の一様性が向上し、エネルギー分解能も改善することが期待されたが、今年度試作した5 cm角MEMS μ-PICでは、大きな改善は見られなかった。この原因の調査を続けて行っていく。また、現在はMEMS μ-PICのSi基板の電位が不定の状態で動作させているが、小さな1 cm角の試験体では、Si基板に電極を取り付け積極的に電位を定めることで、さらにガス利得が上がることが確認されている。5 cm角のMEMS μ-PICでも同様であるか、調査を行う予定である。 これまで試作してきたMEMS μ-PICの電極構造は、従来のプリント基板技術μ-PICと同じであり、X軸とY軸の2つの位置情報を得ていたが、新たに3軸目を導入することにより、さらに詳細な荷電粒子の飛跡が得られることが期待される。この為、新しい電極構造をシミュレーションを用いて探っていく。
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