2017 Fiscal Year Annual Research Report
背景ニュートリノから大質量星とブラックホールの形成史をたどる理論研究
Publicly Offered Research
Project Area | Revealing the history of the universe with underground particle and nuclear research |
Project/Area Number |
17H05203
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
中里 健一郎 九州大学, 基幹教育院, 助教 (80609347)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 超新星ニュートリノ / 超新星背景ニュートリノ / 重力崩壊型超新星爆発 / ブラックホール / 原始中性子星冷却 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、ガドリニウムを添加したスーパーカミオカンデにおける超新星背景ニュートリノの観測に先駆けて、多角的視野に立った検出数の理論予測をおこなう。特に、重力波観測の状況もにらみつつ、ブラックホール形成に伴うニュートリノ放出も含めて、背景ニュートリノのスペクトル予測をおこなうことを目的としている。通常の超新星爆発になる場合とブラックホールができる場合では、星の重力崩壊によって放出されるニュートリノの総量や平均エネルギーに違いがあり、ブラックホールを形成する場合は、星全体に占める数としては少ないが、背景ニュートリノのスペクトルに与える影響は大きいと考えられるため、それも含めた評価をおこなうことにしている。 今年度は、通常の超新星爆発から放射されるニュートリノについて、最近、新たに発表された状態方程式に基づいて、後期フェーズ(原始中性子星冷却期)における放出量を数値計算によって評価したところ、これまでの状態方程式と比べて、総エネルギー・平均エネルギーともに高くなることが見いだされた。これは新たに構築された状態方程式の方が、(1)中性子星の半径が小さく、束縛エネルギーが大きいことから、ニュートリノの総放出エネルギーが上がり、(2)表面付近の非一様相が広く、そこでの原子核サイズも大きいことから、ニュートリノと原子核の散乱が効率的に起こり、ニュートリノが逃げにくく温度が下がりにくくなるため、ニュートリノの平均エネルギーも上がることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、通常の重力崩壊型超新星爆発から放出されるニュートリノの光度や平均エネルギーは、原子核物質の状態方程式に強く依存しないと想定していた。ところが、最近、新たに発表された状態方程式に基づいて、超新星の後期フェーズ(原始中性子星冷却期)におけるニュートリノ放出量を数値計算によって評価したところ、これまでの状態方程式と比べて想定以上に差が大きいことが判明した。背景ニュートリノにおける種々の不定性を評価する上でこの状態方程式による違いを理解する必要があるため、今年度はこの問題に注力しており、研究自体は着実に進んでいるものの当初の計画とはやや異なる方向への進捗であったことから、「やや遅れている」と評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、今年度の研究で分かった状態方程式の依存性も考慮に入れて、背景ニュートリノの評価をおこなう。特に、新しい状態方程式は、昨年の中性子星合体現象の重力波観測のデータとも整合しており、今後、標準的なモデルとして定着していく可能性もあることから、当初の計画よりも念入りに原始中性子星冷却とブラックホール形成の両方の場合について、ニュートリノ放出量の状態方程式依存性を検討することとする。その後、現実的な銀河進化のシミュレーションや銀河の観測に基づく星形成史モデルを用いて背景ニュートリノの検出数予測をおこない、将来の背景ニュートリノ観測によって大質量星とブラックホールの形成史にどこまで迫れるのか、その不定性も含めて検討したい。
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Research Products
(14 results)