2017 Fiscal Year Annual Research Report
超新星ニュートリノで探る大質量星コア構造
Publicly Offered Research
Project Area | Revealing the history of the universe with underground particle and nuclear research |
Project/Area Number |
17H05205
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
中村 航 福岡大学, 理学部, 助教 (60533544)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 超新星 / 数値シミュレーション / ニュートリノ / マルチメッセンジャー天文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
大質量星の進化の最後に起こると考えられている重力崩壊型超新星は、莫大なエネルギーの放出や重元素の生成などを通して、宇宙の構造や化学組成進化に極めて重要な役割を果たすとともに、ニュートリノ、重力波、高エネルギー宇宙線などを用いた新しい天文学の観測対象となっている。その中でも、厚い外層に覆われて電磁波では観測できない中心部の情報を含んでいるニュートリノは超新星の爆発機構を解明する鍵を担っており、その観測によって超新星の理解が飛躍的に進むと考えられる。本研究は、観測が期待される銀河系内超新星起源のニュートリノから得られる科学的知見を最大化することを目指し、超新星ニュートリノとその親星構造との対応関係を明らかにすることを目標としている。 研究計画の初年度に、まず既存の超新星ニュートリノモデルを用いて検出数を見積もった。各時刻で期待される検出数は使用する超新星モデルに依存するが、バウンス直後の約50ミリ秒間の差異は小さかった。この関係を利用して、初期と後期の検出数の比をとることによって超新星までの距離に依らない新しい指標を提案することができた。この指標は超新星親星の構造を反映するので、ニュートリノ検出数から親星構造を判別することができる。以上の方針を確立した後、数値シミュレーションによってより精密な超新星ニュートリノモデルを構築し、上記の指標を用いて超新星親星の構造を判別する方法を論文にまとめ学術雑誌に発表した。 また、銀河系内に限らず過去の超新星から放出されたニュートリノは、現在の宇宙を背景ニュートリノとして満たしている。この背景ニュートリノも超新星の情報を含んでいるが、超新星爆発を起こさずブラックホールを形成するような重力崩壊イベントからのニュートリノの寄与も無視できない。両方の場合を考慮してブラックホール形成率を議論する論文を学術雑誌に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では初年度にコード開発と数値計算を実行し、2年目に成果をまとめる予定であった。コード開発においては予期せぬ問題に直面することがあるため、それを見越して余裕のある計画にしていたが、大きな問題が発生することはなく初年度から生産的計算に取りかかることができた。20個の超新星親星モデルに対して従来の計算に比べてニュートリノ反応と輸送を精緻化した数値シミュレーションを実行し、対応する超新星ニュートリノの時間発展モデルを得た。そのデータを基に複数のニュートリノ検出器で検出数を算出し、考案した新しい指標で超新星の親星構造を判定できるか解析した。当初の計画を前倒しして成果を論文にまとめ、初年度内に出版させることができた。 さらに、超新星ニュートリノデータを応用して背景ニュートリノの解析をおこなった。ブラックホールを形成する場合のニュートリノデータを別途用意して、通常の超新星爆発を起こす場合との比率を複数通り仮定し、それぞれで背景ニュートリノのスペクトルを算出した。こちらも成果を論文にまとめ、初年度内に学術雑誌から出版させることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の研究成果から、超新星ニュートリノ観測から親星の構造を判定できるという当初計画していた方針が正しいことが確認された。一方で、現行の超新星モデルは空間2次元軸対称を仮定していることから、衝撃波が対称軸に沿って発達する傾向にあるなど問題点も残っている。そこで今後の方針として、現在の超新星モデルを空間3次元に拡張する。計算コストが飛躍的に増大するので、2次元モデルの中から代表的なもの数個を抽出して計算を実行する。得られた結果を用いて2次元モデルの系統的傾向を補正する。 また、超新星計算で得られたデータを基に重力波を算出することができる。ニュートリノ信号と合わせて超新星からのマルチメッセンジャー信号の観測可能性を議論する。計算資源に余裕があれば、計算時間を数秒程度まで拡張して核反応ネットワーク計算を実行し、3次元超新星モデルにおける爆発的元素合成量を見積もることも視野に入れる。
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Research Products
(13 results)