2017 Fiscal Year Annual Research Report
新世代アルミニウム合金中の高強度化サイトの構造解析と原子空孔可視化の挑戦
Publicly Offered Research
Project Area | 3D Active-Site Science |
Project/Area Number |
17H05210
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
山本 篤史郎 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40334049)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | アルミニウム合金 / クラスター / 原子空孔 / チタン合金 / 高エントロピー合金 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1) アルミニウム合金Al-Zn-Mg-Ag 純AlにZn,Mg,Agなどを添加して合金化し,さらに,100~300℃の中温域で熱処理を行うと,高密度のナノ析出物あるいはその前駆体であるナノクラスターを形成して,塑性変形を担う転位の運動が抑制されるので,降伏応力が飛躍的に増大する.これらの添加元素の中でも,Agはそのほとんどが熱処理によって析出物中に拡散移動する.また,Ag近傍には原子空孔が多数存在すると考えられている.そこで,Al-Zn-Mg-Ag合金中のAg Lα蛍光X線を用いて蛍光X線ホログラフィー実験を行った.Agのごく近傍半径0.5nm以内では再生原子像の強度が弱く,遠方ほどFCCの原子像が強かった.今後は,Ag近傍で再生原子像の強度が弱い理由を追試ならびに透過電子顕微鏡観察により明らかにしたい.
(2) 高エントロピー合金 結晶構造がFCCの高エントロピー合金Al0.3CrFeCoNiの多結晶インゴットをArアーク溶解で作製し,同一の5mmサイズの比較的大きな結晶粒について試料作製直後と1年間室温時効後のNi近傍局所構造を蛍光X線ホログラフィーで解析した.試料作製直後はNi原子から第二近接の原子像が{111}面内で<110>方位に0.04nm変位している様子が再生された.しかし,1年時効後は変位を生じていない原子像が再生された.また,試料作製直後はホログラムに生じる定在波線が明瞭に観察されたが,1年時効後は不明瞭であった.今後は,他の3d遷移金属元素近傍の局所構造解析を行うと共に,純Ni単結晶の再生原子像ならびにホログラム中の定在波線に及ぼす塑性ひずみの影響も調査する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ホログラム中に現れる定在波線が不明瞭であったため解析が困難であったが,アルミニウム合金試料中のAg濃度が0.07at%と低いにもかかわらず,Ag近傍の原子像を再生できたことから,当初の予想通り本研究で蛍光X線ホログラフィーを利用できることを確認できた.よって,研究は概ね順調に進展している.一般に蛍光X線ホログラフィーで再生される原子像の強度は,ホログラムの記録に用いた蛍光X線を発する原子に近いほど強い.ところが,本研究で得られた結果では,Agのごく近傍の原子像強度が弱く,遠方の原子像が強いことから,Ag近傍で原子配列に何らかの異常が生じていることが推測される.この結果は,従来知られていない知見であり,今後は実験結果の解析とアルミニウム合金の理論再生原子像を比較することにより,原子空孔の所在を突き止める.
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Strategy for Future Research Activity |
アルミニウム合金中に含まれる微量元素Ag近傍では,再生原子像の強度がAgのごく近傍で弱く,遠方で強いことがわかった.この結果は,一般的な蛍光X線ホログラフィーの再生原子像の強度分布と逆の傾向を示している.したがって,Ag近傍では原子配列に何らかの乱れが生じているか,Agのごく近傍に原子空孔が存在することにより,Agのごく近傍の再生原子像強度が弱くなっている可能性がある.そこで,アルミニウム合金中に含まれる平均原子について,理論計算ホログラムからその再生原子像を求める.理論計算で求めた再生原子像強度と実験結果を比較し,先に示した可能性について検証する.具体的には,Ag近傍に原子空孔が1個ないし2個ある様々なケースについて再生原子像強度を理論計算し,実験結果から得られた再生原子像の強度分布が再現できるか検証する.再現できれば,Agのごく近傍のサイトに原子空孔が存在することが示唆されると期待される.
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Research Products
(6 results)