2017 Fiscal Year Annual Research Report
Investigation on the device application of photo-induced doped topological insulator
Publicly Offered Research
Project Area | 3D Active-Site Science |
Project/Area Number |
17H05211
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
坂本 一之 千葉大学, 大学院工学研究院, 教授 (70261542)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ナノ構造物理 / 光誘起ドーピング / トポロジカル絶縁体 / スピントロニクス / 表面物性 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者が見出したトポロジカル絶縁体(TI)への光誘起ドーピングは、電荷注入の活性サイトを任意に生成してフェルミ準位のシフトをナノメートルスケールの領域で自由に制御することができるものの、TIを用いた半導体スピントロニクスデバイスの実現に向けて不可欠であるその機構を解明するには至っていない。そこでドーピングの活性サイトとドーパント形成の活性サイトを明らかにすることを目的に初年度は、Swiss Lightsource(SLS)のPEARLビームラインにて光誘起ドーピングされたBi2Se3のホール注入の活性サイトである酸素の 1s内殻準位からの光電子回折パターンと、ドーパント形成の活性サイトである炭素原子(もしくは炭素を含む分子)からの光電子分布を解析した。酸素からの回折パターンに関しては光電子分光装置の装置関数を考慮しながら詳細に解析した結果、酸素原子の吸着サイトが最外層Seと1層目Biの間で、3つのBiの重心位置であることを明らかにした。炭素の吸着構造(や分子構造)も同様に解析を試みたが光電子強度が弱く、回折パターンを得ることは出来なかった。そこで、炭素の局所吸着構造を調べるために走査トンネル顕微鏡を用いた原子スケールの構造測定と原子スケールでの電子状態測定を開始した。また、我々の手法では劈開による試料の清浄化に用いているスコッチテープからドーパント形成の活性サイトである炭素が供給されていることを明らかにし、スコッチテープ近傍での試料の滞在時間を調整することによって炭素の吸着量が調整可能であることも明らかにした。 主課題以外にも、本新学術領域に参加することで新しく始めた金ナノ粒子の電子状態解明に関する共同研究において、ナノ粒子では5d軌道の電子状態が金のバルク固体と大きく異なることを明らかにし、現在はその要因を考察している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
トポロジカル絶縁体を用いた半導体スピントロニクスデバイスの実現に不可欠であるドーピングの活性サイトである酸素原子の吸着位置を実験的に明らかにしたことにより、酸素吸着によるスピン偏極したディラックフェルミオンへの影響を第一原理計算による理論計算でサポートしてもらうことが初めて可能となった。これは本研究に大きな進展をもたらすものである。ドーパント形成の活性サイトである炭素に関しては、その吸着位置を光電子回折で得ることはできず当初の計画通りに進めることはできなかったが、現在走査トンネル顕微鏡を用いることによって炭素が炭化水素などの分子状で吸着している可能性が高いという結果を得ており、光電子回折で進めることが出来なかった計画を今後補うことが出来ることを示唆する結果である。また、光を照射した部分のみドーピング効果が起こることを確認できた。これは光誘起ドーピングを用いてトポロジカル表面をフォトリソグラフィのようにパターニングできる可能性を示唆する結果であり、当初の計画通りである。 また、当初の計画にはなかったが本新学術領域に参加することで主課題と異なる領域内の共同研究を新たに始めた。チオールで保護された金ナノ粒子のサイズに依存した電子状態を測定し、その結果を解析したところ、サイズ効果が現れるのは最外殻のs軌道では無く、5d軌道であることをもとめた。新学術領域では領域内の新規共同研究が奨励されており、この共同研究の開始は当初の計画以上の成果とあると言える。 炭素の吸着構造に関しては計画通りに進まなかったものの、その他の計画に関しては予想通り、もしくは予想以上に進んでおり、全体としておおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、平成29年度に得た成果を基盤に課題を発展させるとともに、電気伝導測定によるトポロジカル絶縁体の半導体スピントロニクスデバイスへの応用を探索する。具体的には、ドーパント形成の活性サイトである炭素に関するより詳細な知見を得るために、まずは我々の用いる手法において炭素の供給源であるスコッチテープから放たれる気体分子を詳細に調べる。それと平行し、極低温走査トンネル顕微鏡を用いて炭素分子のBi2Se3上の吸着構造を明らかにし、走査トンネル分光によって吸着炭素分子からの距離に依存した電子状態を測定する。これらの実験結果からドーパント形成のメカニズムを明らかにする。また、これら得られた実験結果を用いてドーパントとその形成サイトが試料の物性に与える理論的考察を連携研究者である金沢大学の小田竜樹教授が中心となって行う。佐賀県立九州シンクロトロン光研究センターにてマスキングしたBi2Se3試料に光を照射し、絶縁体領域と金属領域をパターニングした試料を作製する。その試料を真空封入して千葉大学に搬送し、連携研究者である青木伸之准教授の協力のもと、電気伝導測定を行って同試料を用いた半導体スピントロニクスデバイスの実用化に向けた指針を示す。 平成29年度に開始した金ナノ粒子の共同研究に関しては、これまで得られたデータを精査・解析した後、連携研究者の小田竜樹教授の助けを借りて同ナノ粒子の電子状態に関する理論的考察を行う。
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Research Products
(13 results)
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[Presentation] Electronic properties of thallium single crystal thin film2017
Author(s)
M. Iwaoka, K. Koga, Y. Yaoita, Y. Zhang, Y. Sassa, J. Fujii, Y. Yoshida, Y. Hasegawa, S. Ichinokura, R. Akiyama, S. Hasegawa, and K. Sakamoto
Organizer
33rd European Conference on Surface Science (ECOSS 33)
Int'l Joint Research
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