2017 Fiscal Year Annual Research Report
Real time observation of reaction active cite by X-ray photoelectron diffraction
Publicly Offered Research
Project Area | 3D Active-Site Science |
Project/Area Number |
17H05214
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
峰本 紳一郎 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (90323493)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 原子・分子物理学 / 光電子回折 / 反応活性サイト / 光電子分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画では、真空紫外(EUV)領域のコヒーレント光源である自由電子レーザー(FEL)をプローブ光とし、可視・近赤外のレーザー光で励起した分子の核波束の時間発展を光電子回折法によって追跡するための方法論を確立することを目指す。さらに、光電子回折法によって超高速に進行する光化学反応のダイナミクスを明らかにすることを目的としている。 初年度は、EUV-FELパルスを光源とする光電子分光法の開発に専念して研究を進めた。まず、EUV-FELパルスと超短パルス光学レーザー光との同期実験を行い、生成する光電子の速度分布イメージを測定したところ、それぞれのパルスの光子が時間的・空間的に十分重なっているときに発生するイオン化過程(超閾イオン化過程)に相当するピークの観測に成功した。一方、高強度電場近似に基づく理論計算を併用して光電子スペクトルをシミュレーションしたところ、FELと光学レーザーとの時間ジッターが1ピコ秒程度あると仮定したときにスペクトルをよく再現することが分かった。また、EUV-FELを用いて、配列したCO2分子の光電子運動量画像の測定にも成功した。この光電子運動量画像は、分子の配列状態と光電子の放出角分布を反映したものである。遅延時間ごと、すなわち、分子の配列状態ごとに観測した光電子運動量画像から光電子の放出角分布を再構成するためのプロトコルを開発することを目指し、解析を進めている。 初年度の成果を発展させ、2年度目には、光電子回折法による「反応サイトの実時間観測」の実現に取り組む。最初の系として、励起状態が作りやすく結果の解釈も単純な2体解離反応の光電子回折から始め、環状化合物の開環反応や直線分子の変角反応に取り組み、超高速反応の全体像を解明することを目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画では、真空紫外(EUV)領域の光源である自由電子レーザー(FEL)をプローブ光とし、光学レーザー光で励起した分子の核波束の時間発展を光電子回折法によって追跡するための方法論を確立することを目指す。さらに、光電子回折法によって超高速に進行する光化学反応のダイナミクスを明らかにすることを目的としている。 研究計画初年度は、時間分解光電子分光法の開発に専念して研究を進めた。時間分解測定を行うには、ポンプ光とプローブ光との時間的・空間的な重なりを確保することが観測の肝となる。そのため、まず、EUV-FELと超短パルス同期レーザー光との同期実験を行った。Ar原子を試料として用い、生成する光電子の速度分布のイメージを観測したところ、FELと同期レーザーパルスが時間的に重なったときに、それぞれのパルスの光子が同時に関与する超閾イオン化過程に相当するピークの観測に成功した。超閾イオン化過程は、FELパルスによりイオン化が起こった瞬間に同期レーザーパルスの光子が吸収または放出される過程であり、超閾イオン化ピークの観測は両パルスが時間的・空間的に十分重なっていることを示している。一方、高強度電場近似に基づいた理論計算によって得られた超閾イオン化スペクトルをシミュレーションしたところ、FELと同期レーザーとの時間ジッターが1ピコ秒程度あると仮定したときにスペクトルをよく再現することが分かった。また、ジッターを考慮することにより、光電子スペクトルの角度分布も実験結果をよく再現した。このように、超閾イオン化の観測はFELの同期実験で不可避なジッターの評価に応用できることを明確にした。 一方、EUV-FELによる配列したCO2分子からの時間分解光電子画像の測定も試みた。配列状態により光電子の角度分布に違いが見られており、詳細な解析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画初年度は、超閾イオン化信号の観測やその理論的なシミュレーション、また、配列した分子からの光電子画像の観測に成功しており、EUV-FELとTi:sapphire同期レーザーの時間的、空間的な重なりを確保する方法論は確立した。2年度目は、前年度に観測した配列した分子からの光電子画像の理論的な解析に取り組む。また、初年度の経験を基に、本研究計画の最終目標である「反応サイトの実時間観測」に取り組む。 配列した分子からの光電子画像は、分子の配列状態と光電子の放出角分布とを反映したものである。遅延時間ごと、すなわち、分子の配列状態ごとに観測した光電子画像から光電子の放出角分布を再構成するためのプロトコルを開発する。ここで、FELと同期レーザーの時間ジッターの影響を取り除くため、ショットごとに測定しているイオン画像と光電子画像を1対1対応させ、FEL実験で不可避なジッター対策を行う。 並行して、EUV-FELとTi:sapphireレーザーの同期実験により、超高速光電子回折実験を行う。例えば、ヨードメタン分子は、波長400 nmのレーザー光により準安定状態に励起することができ、この状態は1ピコ秒程度で2体解離する。解離に従って変化する核間距離の変化を調べるため、ヨウ素原子の4d光電子や炭素原子の1s光電子を用いた光電子回折実験を行う。2体解離は光化学反応の最も基礎的なものであり、原理実証実験として相応しい 上記の原理実証実験を発展させ、直線分子の変角振動や環状分子の開環反応など、光電子回折法で最も得意とする分子の形状が大きく変形する反応に対しての光電子回折に取り組む。理論シミュレーションと比較しながら、超高速で進行する光化学反応の全体像を明らかにすることを目指す。
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Research Products
(10 results)
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[Presentation] Electron spectra in short-pulse two-color (EUV+NIR) photoionization of atoms and molecules2017
Author(s)
Shinichirou Minemoto, Hiroyuki Shimada, Kazuma Komatsu, Wataru Komatsubara, Takuya Majima, Soichiro Miyake, Tomoya Mizuno, Satoru Takano, Hirofumi Sakai, Shintaro Yoshida, and Akira Yagishita
Organizer
33rd Symposium on Chemical Kinetics and Dynamics
Int'l Joint Research
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