2017 Fiscal Year Annual Research Report
原子レベル構造制御による垂直磁気異方性を持つ3d遷移金属酸化物の開発
Publicly Offered Research
Project Area | 3D Active-Site Science |
Project/Area Number |
17H05217
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
菅 大介 京都大学, 化学研究所, その他 (40378881)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 酸化物ヘテロ構造 / 磁気異方性 / 酸素八面体回転 / ストレイン |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では、遷移金属酸化物中の磁気異方性などの磁気特性を、ヘテロ界面構造を介して制御することを目的としている。この目的のためには、ヘテロ界面を原子レベルでデザインすることが重要になる。そこで、へテロ界面の構成要素となる遍歴強磁性体SrRuO3エピタキシャル薄膜を対象として、放射光X線回折によって薄膜構造を決定し、ヘテロ界面の設計・構築に基盤となる知見を取得した。放射光X線回折を利用することで、薄膜中の酸素を含んだ全構成元素の原子座標を決定することが可能になり、薄膜中の「金属-酸素結合」(酸素八面体回転)を可視化できる。得られた結果からは、圧縮ストレイン下にあるSrRuO3薄膜においては、ストレインの影響のために面内方向のRuO6酸素八面体回転は消失する一方で、面直方向(薄膜面に垂直方向)の八面体回転は、バルクのそれよりも大きくなっていることが明らかになった。この結果は、酸素八面体回転は、「180度より小さいRu-O-Ru結合角度」を安定化する一方で、基板からの圧縮ストレインは180度に近いRu-O-Ru結合角度」を安定化するということを考慮すれば理解できる。また面直方向の八面体傾斜の結果、面直方向(z方向)の成分を有するt2g軌道への電子占有が優先されることが、圧縮ストレイン下におけるSrRuO3で見られる垂直磁気異方性の起源であると理解できる。この結果は、圧縮ストレイン下におけるSrRuO3薄膜を構成要素としたヘテロ界面を構築し、他の酸化物へと面直方向の酸素八面体傾斜を導入することで、垂直磁気異方性を安定化できる可能性を提示するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
パルスレーザー堆積法で、NdGaO3基板上にエピタキシャル成長させたSrRuO3薄膜に対して、SPring-8のBL13XUに設置された高分解能回折計を用いて構造評価を行った。測定の際に二次元検出器PILATUSを用いることで、広い逆格子空間にわたって回折強度を高速に観測した。また放射光X線回折を適用したことで、通常のX線回折では検出することの難しい酸素原子の原子変位に関する情報も取得できた。観測された回折強度を再現するように構造モデルを構築することで、ヘテロ構造中のRu-O-Ru結合(RuO6酸素八面体回転)を可視化するのことに成功した。この一連の取り組みを通して、薄膜ヘテロ構造試料に対する放射光X回折測定技術および解析技術を構築できた。最適化された構造モデルから、薄膜中の酸素八面体歪みにはストレインが強く影響していることが明らかにされただけではなく、酸素八面体歪みが薄膜中の磁気異方性を決定する重要な役割を果たしていることが明らかになった。これらの結果は、酸化物のヘテロ構造の磁気特性を理解する上で重要な知見を与えるものである。本研究成果に関しては、現在論文投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られた知見を基に、ヘテロ構造界面を設計・構築し酸化物の磁気異方性を制御し、機能開発を行う。圧縮ストレインを印加したSrRuO3と3d遷移金属酸化物とで構成されるヘテロ構造を作成し、ヘテロ界面を通して酸素八面体回転などの格子歪みを導入することで、磁気異方性など磁気特性の制御を目指す。放射光X線構造解析による界面構造の評価とともに、機能物性との相関を見出すことで、酸化物ヘテロ界面における「構造―機能相関」を明らかにする。
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