2017 Fiscal Year Annual Research Report
Nucleoside synthesis: Apatite phosphate catalytic reaction from glycolaldehyde
Publicly Offered Research
Project Area | Hadean Bioscience |
Project/Area Number |
17H05227
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡本 晃充 東京大学, 先端科学技術研究センター, 教授 (60314233)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | リボース / ヒドロキシアパタイト / ヌクレオシド |
Outline of Annual Research Achievements |
反応の触媒として結晶構造が部分欠損したヒドロキシアパタイトのリン酸イオンおよびカルシウムイオンを利用する。この結晶格子の欠陥に現れるリン酸が、反応の活性化エネルギーを大きく低減させる触媒として機能することが期待される。これまでの結果として、天然鉱物ヒドロキシアパタイトの粉末を触媒としてC1/C2炭素源から中性・加熱条件下でリボースが生じることが発見された(Org. Biomol. Chem. 15, 8888-8893 (2017)、フロントカバーにも採用)。今年度の研究では、リン酸機能を有する不均一系触媒ヒドロキシアパタイトを活用した効率的な「プロトヌクレオシド」の合成ルートを確立のための探索を開始した。リボースの合成とほぼ同じ条件で、この反応スープに窒素源を加えることによって、核酸塩基前駆体もしくはプロト核酸塩基が生じるかを検討した。主な窒素源としては、炭素-窒素結合を含む窒素原子数1~3の天然に存在しうる分子を想定しており、シアン化物、尿素、グアニジンを用いて検討する。アパタイト結晶格子表面のリン酸を用いてグリセルアルデヒドを活性化し、尿素もしくはグアニジンが求核攻撃しやすい環境を作りだすことを目指した。ヒドロキシアパタイトの粉末を触媒としてC1/C2炭素源ホルムアルデヒド及びグリコールアルデヒドもしくはこれらから得られる中間体グリセルアルデヒドに対して窒素源グアニジンを加えた反応スープを用いることによって、核酸塩基前駆体もしくはプロト核酸塩基が生じるかを検討した。80℃、40時間~87時間の水中の反応でピリミジン環もしくはプリン環が生じるか検討した。その結果、核酸塩基前駆体である2-アミノピリミジンが反応生成物の中に含まれることが確認された。また、グリセルアルデヒドにグアニジンが付加したことを示す質量も質量分析で観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
リボース部分については論文が掲載されたとともに、塩基部分についても合成の手がかりをつかむことができた。当初は、ヌクレオシドを構成する各ユニットを得るための条件検討で数年かかることを予想していたが、その予定を大幅に上回るスピードで研究が進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で得られた核酸塩基前駆体もしくはプロト核酸塩基とリボースを用いて、両者によるグリコシド結合形成を経て、プロトヌクレオシドを得ることができるかを検討する。この段階は、以前Sutherlandらによって非効率・低収率が指摘されており、未解決の工程である。 前半のプロトヌクレオシドが生じるかどうかは、グリコシド結合が選択的かつ効率的に進行するかが鍵になる。おそらく、塩基が求核攻撃をするに十分な高い電子密度を持っていること、リボース1’水酸基が脱離するのに十分な活性を有する触媒が存在することが求められるだろう。塩基の求核性については、平成29年度の研究で得られた核酸塩基前駆体もしくはプロト核酸塩基が高い電子密度を持っているかあらかじめ検証しておくことがポイントであり、当てはまらない場合には電子密度を高められる付加物を検討する必要がある。求核攻撃を支援する触媒については、まず第1の触媒として、これまでの研究との一貫性を保つためにヒドロキシアパタイトによる反応活性化を検討し、その効果を検証する。もし不首尾に終わった場合には、ルイス酸のような役割を果たすことができる他の金属イオンの添加を通して反応を検討する。 後半のプロトヌクレオチドの検討においては、リン酸(5価)が水酸基にそのまま付加することが容易ではないことが予期されるため、どのように活性な3価のリンを用意するかが鍵になる。今回の研究で触媒として用いているヒドロキシアパタイト表面を還元して部分的に3価のホスホン酸を作ってもよい。しかし、この場合もリンを5価から3価へ還元する反応はきわめて限られており、放射線や金属などを併用して達成する必要があり、困難が予想される。これらの方法でリン酸化が達成されれば大変価値の高い研究成果が得られると考えられる。
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