2017 Fiscal Year Annual Research Report
未知光合成生物の単離による始原的光エネルギー代謝系の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Hadean Bioscience |
Project/Area Number |
17H05231
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
塚谷 祐介 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海洋生命理工学研究開発センター, 研究員 (10421843)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 光合成細菌 / 光合成の進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
今から約46億年前から40億年前までの冥王代に初期生命の生態系が誕生し、その後約34億年から33億年前までには最初の光合成生物が誕生したと言われている。光合成の誕生期から現代の生物に見られる光合成反応様式まで進化する過程はミッシングリンクが多く、光合成進化には不明な点が多く残されている。この疑問を紐解く方法は、進化上の過渡的形質を反映するような光合成装置を持つ生物を環境中から新たに単離することや、またあるいは遺伝子工学的手法により過渡的形質を意図的に創出してその性質や成立条件を調べることである。本研究では、国内の特殊環境から新規な光合成細菌を単離することで、光合成進化過程のミッシングリンクを埋めていくことを目的とする。また、遺伝子工学的手法を用いた過渡的形質創出も視野に入れる。新規光合成細菌を単離してその光合成器官と色素を分析することによって、光合成誕生期・過渡期の古地球環境条件を推定出来るようになることが期待される。原始地球において、深海中では可視光~近赤外光が優先したと言われており、また一方では地表層付近の光条件はよく分かっていない。本研究を通して、始原的な光合成生物の利用する光波長が分かることで、当時の光環境が推定できることが期待される。 現在までに計画内容に沿った国内3地点の環境サンプルの採取は完了しており、実験室内での集積培養に取り組んでいる。光合成色素・タンパク質による呈色を示す混合培養物が得られた場合にはその集積カルチャーをHPLCにより分析して色素分子種を決定する。得られる色素分析結果から生育に最適な光波長を推定し、光源を最適化して新規光合成細菌の単離を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通り、特殊環境サンプルの採取を行い、実験室での集積培養を開始している。特定の代謝系を持つ光合成細菌がターゲットの場合は(例えばマンガン酸化型光合成生物)、専用のリアクター/インキュベーターを組み上げた上、集積培養を進行している。温泉微生物マットサンプルから集積した培養物からは様々な呈色を示す光合成細菌を得ている。好熱性光合成細菌に関しては既報のものと近縁の種しか得られていないが、中温性の株は新規光合成細菌であると示唆される。この株は、光合成器官の発現調整が通常とは異なることが予想されるが、現在はその確認を行っているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
既に得られている集積培養からの新種単離培養を目指す。また、再度北海道大沼での試料採取も計画している。マンガン酸化光合成細菌の培養のために稼働しているリアクターが順調であれば、この再採取試料も加えていく予定である。また光化学反応中心や色素合成酵素をターゲットとした遺伝子工学的手法による光合成細菌変異株の作製も展開していく予定である。
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