2017 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of photoinduced phase transition in charge-transfer complex nanocrystals
Publicly Offered Research
Project Area | Application of Cooperative-Excitation into Innovative Molecular Systems with High-Order Photo-functions |
Project/Area Number |
17H05248
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小野寺 恒信 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (10533466)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 電荷移動錯体ナノ結晶 / 光誘起相転移 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は、独自に開発した還元共沈法を駆使して、結晶サイズとドーピング密度を制御した電荷移動錯体ナノ結晶を作製し、構造評価を行った。さらに、最終年度に予定している光誘起相転移特性の評価に向けた予備実験を実施し、作製条件の最適化に知見をフィードバックした。具体的には、 (1)還元共沈法による電荷移動錯体ナノ結晶の作製と構造評価 結晶成長と酸化還元反応を競争的に進行させ、難溶性の電荷移動錯体CuTCNQナノ結晶をメタノール中に析出させた。得られたナノ結晶は粉末X線回折パターンがバルク結晶と一致するものの、その組成比はバルク結晶ではCu:TCNQ = 1:1であるところが、ナノ結晶ではCu:TCNQ = 1.3:1のようにCuが過剰であることが分かった。EDSマッピングの結果、Cuはナノ結晶中に均一に分散していることが分かった。 (2)半導体―絶縁体転移の評価に向けた予備実験 Cu-TCNQ結晶では、相転移前後で化学状態の変化に応じたラマンシグナルのシフトが観測されることから、ナノ結晶における観測を行った。はじめに、電場印加によるスイッチングによる確認を行った結果、アニオンラジカルから中性種への化学状態の変化を確認した。以上を指標にして、ラマンスペクトル測定において光照射によるスイッチングを試みたところ、まだ繰り返し再現性が低いものの、光誘起相転移に伴う化学状態の変化を確認した。この成果は、再現性を向上することで光誘起相転移の閾値の評価に繋がるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、サイズ・形状制御された電荷移動錯体CuTCNQナノ結晶を作製し、その構造解析を行い、次年度に繋がる光誘起相転移特性の予備実験を実施した。 (1)急激な非平衡過程を経るナノ結晶化と酸化還元反応を組み合わせることで(還元共沈法)、バルク結晶とは異なる組成比のCu-TCNQナノ結晶を作製した。具体的には、TCNQと還元剤であるNaBH4を溶解したメタノール中に CuSO4メタノール溶液を滴下することで作製し、いずれの条件でもナノ結晶は Cu-TCNQバルク結晶(Cu:TCNQ = 1:1)と同様の粉末法 XRDパターンを示したものの、組成比はバルク結晶のCu:TCNQ=1:1とは異なり、Cuが過剰であることが明らかとなった。ナノ結晶のEELS分析の結果、Cuの化学状態は+1価であり、ラマンスペクトル測定ではTCNQアニオンラジカルに加え、TCNQジアニオンの存在が確認された。これは、過剰に含まれるCu(I)との電荷平衡を保つためと推測される。また、過剰に存在するCuの正確な存在位置は明らかになっていないものの、Cu(I)はナノ結晶中で偏在することなく一様に存在していることをSTEM-EDS分析で確認した。 (2)次年度に繋がる光誘起相転移特性の予備実験を実施した。はじめに、相転移を確認するため、電場印加による相転移をラマンスペクトル測定により行った。I-V特性にはバルク結晶では観測されない多段階スイッチングと、なかでもアニオンラジカルから中性種への化学状態の変化を明瞭に確認した。次に、ラマンスペクトル測定におけるアニオンラジカルから中性種への化学状態の変化を指標にして、光照射によるスイッチングを試みたところ、まだ繰り返し再現性が低いものの、光誘起相転移に伴う化学状態の変化を確認した。この成果は、再現性を向上することで光誘起相転移の閾値の評価に繋がるものである。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、初年度に作製した電荷移動錯体CuTCNQナノ結晶の堆積薄膜を用いて、光誘起相転移特性を評価する。特に、バイアス印加条件下において、光誘起相転移の閾値などについて、結晶サイズ・内部構造・励起光の照射強度との相関を明らかにし、一光子吸収と一分子応答を越える協同的光応答の増幅と制御手法の開拓を目指す。
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