2017 Fiscal Year Annual Research Report
Two-photon excitation of optically-forbidden transition using nanostructure and entangled photons
Publicly Offered Research
Project Area | Application of Cooperative-Excitation into Innovative Molecular Systems with High-Order Photo-functions |
Project/Area Number |
17H05252
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
岡 寿樹 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (00508806)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 量子もつれ / ナノ構造 / 2光子励起 / 禁制準位励起 |
Outline of Annual Research Achievements |
ナノ構造に照射された光は、波長よりも十分小さなナノスケールの空間に閉じ込められることが知られている。そのためナノ構造近傍の光子場では、慣習的な長波長近似を仮定した光学遷移選択則が破れ、近傍に配置された分子の禁制準位を励起できる可能性が知られている。一方、量子もつれ光は人工的に制御された新しい光であり、従来のレーザー光には存在しない「量子相関」に起因した内在的な同時性を有するため、低強度下でも効率的な2光子吸収が期待されている。本研究の目的は、このナノ構造と量子もつれ光を組み合わせることで、「2光子吸収」で「効率良く」「高エネルギー禁制準位」を励起できる光ナノ反応場理論の構築を目指すことにある。 量子電気力学理論に従えば、禁制遷移への遷移確率は長波長近似を施さない相互作用Hamiltonianを用いれば計算できることが分かる。この計算で必要になるのは、光子場の厳密な空間分布関数および分子内電子の波動関数である。そこで当該年度では、手始めとして、解析が比較的容易な半導体マイクロディスク共振器近傍に形成されるエバネッセント場と半導体量子ドットの禁制準位励起の解析を行った。解析結果から、長波長近似下では結合係数が厳密に0である禁制準位が、エバネッセント場では数μeVまで増強することを示した。 更に量子もつれ光を用いた2光子吸収の解析を行い、Rb原子およびNa_2分子系を例に、量子もつれ光の広帯域化と高い量子もつれ度の実現により、従来のレーザー光と比較して3桁以上の励起効率の増強が可能であることを示した。 また金属ナノ構造近傍による局在表面プラズモンによる解析を行うための第2量子化の近似理論を構築した。これにより量子もつれ光による「2光子吸収」とナノ構造による「禁制準位励起」の解析が可能になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の目標は、ナノ構造近傍に形成される局在光と電子系の相互作用を解析するための光子場の厳密な空間分布関数および分子内電子の波動関数の解析である。今年度では、先ず解析が容易な半導体系マイクロディスク共振器と量子ドットにより、長波長近似下での禁制準位が局在光により確かに遷移可能になることを示した。 更に、量子もつれ光による2光子吸収とナノ構造による禁制準位励起の解析には、光の量子性を加味した光子場による解析が必須となるが、従来の計画通り金属ナノ構造近傍の局在表面プラズモンから簡単に第2量子化できる近似理論の構築に成功している。量子論的な光子場の空間分布関数は、古典論から導出されるものと一致することが知られており、そのため複雑な配置に対する量子論的な光子場も古典論による数値計算(有限要素法やFDTD法)を用いて計算することが可能である。 後は分子系の波動関数の解析であるが,これは簡単な分子系であれば慣習的なソフトウェアを用いて解析が可能である。よって構築した理論をより複雑な系へ応用し、上述の数値計算と組み合わせることで当初の計画を達成できる。 以上の通り,おおむね当初の予定通りに計画が進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に従い、量子もつれ光による「2光子吸収」とナノ構造による「禁制準位励起」が両立できる入出力光応答場を構築する。方針としては、入射された量子もつれ光子を効率良くナノ構造近傍の分子へと届かせるために、微小共振器とナノ構造との結合系における共振器QED効果の解析が必須になる。一般的に共振器QED効果は、共振器QED変数により弱結合と強結合とに分類される。しかし、入射光子がスムーズに共振器内に入りその内部の物質と相互作用するには、弱結合と強結合の中間的な領域が良いことが知られており、この条件を満足するナノアンテナ-共振器構造を明らかにすることが今後の課題になる。 また分子系2光子吸収を高効率化する量子もつれ光の波動関数制御の解析も並行して行い、2光子励起効率の更なる増強や新しい分光法の構築を目指した解析も行っていく予定である。
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