2017 Fiscal Year Annual Research Report
高位電子励起状態の高精度計算に向けた電子論の開発とフォトクロミック分子への応用
Publicly Offered Research
Project Area | Application of Cooperative-Excitation into Innovative Molecular Systems with High-Order Photo-functions |
Project/Area Number |
17H05274
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
柳井 毅 分子科学研究所, 理論・計算分子科学研究領域, 准教授 (00462200)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 理論化学 / 電子相関 / 光化学 / フォトクロミズム / 励起状態 / ラジカル / 光化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度H29では、以下の二つの成果を得た。(i)密度行列繰り込み群(DMRG)による構成で波動関数理論を基盤として、高位励起状態に対する高精度な理論的記述を可能とする方法論および計算法の開発を行い、高性能プログラムを完成させ、その性能評価を行い、良好な結果を得た。(ii)その手法を用いて、領域内研究者と協力して、種々のフォトクロミック化合物(ジアリールエテン誘導体等)の励起状態に対する計算を行った。 (i)では、電子励起状態の波動関数を高精度に求める理論のフレームワークとして、多参照理論に基づく電子状態理論DMRG-XMS-CASPT2法を開発した。多参照理論では、波動関数は複数の電子配置の量子的重ね合わせとして記述される。本研究では、このCASPT2法を複数の励起状態を効率よく数値的安定に求めることが可能な拡張理論XMS-CASPT2法の実装を行い、DMRG波動関数を参照関数とする組み合わせを実現した。そして、二種類のジアリールエテンの光異性反応に関する多状態エネルギーポテンシャルプロファイルを求めることができた(T. Yanai JCTC 2017)。 (ii)本手法を用いて、種々のフォトクロミック化合物の励起状態に対する応用計算を行った。応用計算では、領域内の研究者と共同研究を実施した。A03グループの阿部教授らが開発したペンタアリルビイミダゾールのフォトクロミック分子の開発報告した(Y. Kobayashi JACS 2017)。本研究では、PABIのフォトクロミック分子の機構に関する理論研究を行った。高速分光により反応機構の解明に関する研究は行われてきたが、フォトクロミックの開環反応の具体的反応機構、電子論的理解は不十分であった。そこで本研究では、阿部グループ(A03)および重田グループ(A01)との共同で、高精度電子状態理論に基づく理論解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、高位励起状態に対する高精度な理論的記述を可能とする方法論および計算法を開発し、それを種々のフォトクロミック化合物の反応機構の解明に応用することである。研究実績の概要でも示したように、高精度計算法の開発・実装は高いレベルまで達成された。実際に、領域内研究者の対象とする分子の励起状態ポテンシャルを提示することに成功している。反応機構の解明として、A03班の阿部教授およびA01班の重田教授との共同研究を推し進め、反応機構の特定する一定の成果を得ている。また、A03班の小畠グループとの共同研究で、ジアリールエテン誘導体の結晶の光吸収帯の電子論的機構の解明を行っている。我々の計算結果は実験事実とも良い一致をしており、実験では特定の難しい機構の詳細を解明している。
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Strategy for Future Research Activity |
DMRG-XMS-CASPT2法のプログラムは高いレベルの完成度で実装が完了した。この励起状態計算のスキームを活用して、励起状態エネルギーポテンシャルを提示する。A01班宮坂グループらはジアリールエテンの光スイッチング反応に対する分光実験から、二光子吸収から反応効率が増幅されることを示した。この二光子吸収は、基底→S1→高位Sn状態という段階的励起機構であり、Snから開環状態への高速な反応パスを通ると示唆された。本研究では、励起状態ポテンシャルの高精度計算を行い、詳細な機構解析を実現する。A03班の小畠グループとの共同研究で、ジアリールエテン誘導体の結晶の光吸収帯の電子論的機構の解明をXMS-CASPT2法を利用して行う。固体状態は、溶液中と比べて吸収・発光帯が長波長化することを見出した。この長波長化の電子論的理解をあたえるために、本研究では、分子のポリメリゼーションに対する励起エネルギーの依存性をDMRG-XMS-CASPT2法を用いて検証する。具体的には、N量体の分子構造をX線結晶構造から抽出し、各N量体に対して、励起エネルギーを見積もり、また波動関数解析を実行し、長波長の機構を解明する。
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Research Products
(10 results)