2017 Fiscal Year Annual Research Report
がん細胞浸潤機構の解明に向けた多相構造体の力学場解析を実現する3D計測手法の開発
Publicly Offered Research
Project Area | Multidisciplinary computational anatomy and its application to highly intelligent diagnosis and therapy |
Project/Area Number |
17H05289
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
森田 康之 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (90380534)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | がん細胞 / 転移 / 浸潤 / 力学場 / 上皮間葉転換 / トランスフォーミング増殖因子 / スフェロイド / 機械的性質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請課題では,物性の異なる多相構造体,すなわち,がん細胞浸潤時における細胞外基質/細胞質/核の一連の力学場を連続的かつ定量的に可視化する包括的力学場解析技術を開発することを目的としている.今年度は,「平成29年度交付申請書」の「研究実施計画」に示したように,包括的3D力学場解析技術の開発を行った.細胞,細胞外マトリックスなど機械的性質の異なる3次元力学場を包括的に解析できるDVC(Digital Volume Correlation)法を開発した.そして,次のような結果を得た.(1)その解析技術を用い,細胞内および細胞外マトリックスの力学場測定に成功した.(2)細胞外マトリックスから入力される力が,細胞内へ伝達される割合は,およそ80%であることを明らかにした.(3)細胞外マトリックスの力学場計測に関しては,がん細胞スフェロイド周辺の力学場計測を行った.トランスフォーミング増殖因子β1(TGF-β1)を添加し,上皮間葉転換を生じさせたがん細胞では,細胞外マトリックスに及ぼす力が,経時的(3日間)に大きくなった.他方,上皮間葉転換を誘起させない場合には,がん細胞が細胞外マトリックスに及ぼす力が経時的に一定であった.それらの大きさは,上皮間葉転換を生じさせたほうが,およそ3倍以上大きくなることがわかった.以上より,現状の研究実績として,がん細胞浸潤時における包括的力学場解析に成功しているとともに,それらの力学場ががん細胞の浸潤・転移にどのような役割を担っているかを明らかにしている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「平成29年度交付申請書」の「研究実施計画」に示したDVCを開発し,力学場の計測に成功している.そのため,「おおむね順調に進展している」と評価できる.
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Strategy for Future Research Activity |
解析技術の開発は成功したので,本年度は,浸潤力学場の測定に注力する.その中でも,転移の8割を示すと言われている集団遊走に着目する.集団遊走の転移モデルとして,がん細胞のスフェロイドを作製する.そして,非等方的に浸潤が生じる原因を,スフェロイドが細胞外基質に及ぼす応力を定量的に測定し,力学的見地からの原因追究に努める.他方,がん細胞スフェロイド内部の応力不均一性から非等方的浸潤が生じるということも考慮し,スフェロイド内部の応力場に着目する.油滴メカノセンサーをスフェロイド内に散在させ,スフェロイド内部の応力を定量的に測定する.これらの結果から,がん細胞浸潤時の力学的Heterogeneityの解明に取り組む.
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Research Products
(10 results)