2017 Fiscal Year Annual Research Report
深層学習を用いたすい癌の病理組織画像からの細胞タイプ識別モデルの構築
Publicly Offered Research
Project Area | Multidisciplinary computational anatomy and its application to highly intelligent diagnosis and therapy |
Project/Area Number |
17H05297
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
小野 直亮 奈良先端科学技術大学院大学, データ駆動型サイエンス創造センター, 准教授 (60395118)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 深層学習 / 膵がん / 病理組織画像 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度の研究では、膵がんのモデルであるKPCマウスの組織サンプルから得られた膵臓の腫瘍の連続スライスから作成された複数の染色画像を用い、ヘマトキシリン・エオシン(HE)染色の組織画像からマッソン・トリクローム(MT)染色の組織画像の染色パターンを予測し、自動的に変換するためのコンバーターを深層学習によって構築した。畳み込みニューラルネットワークを階層化させ、入力と出力を連結したU-Netモデルをもとにした敵対的学習ネットワーク(GAN)により画像間の相関を学習させ、細胞の核と原形質を染色するHE画像だけから、細胞間の線維組織を染色するMT染色の度合いを組織レベルで予測できることを示した。このモデルでは、14階層のニューラルネットワークによる深層学習により、元画像の約400分の1まで情報を圧縮した特徴抽出を行なっている。構造相関係数による評価では領域ごとに相関係数0.2~0.5程度の相関となり、細胞数にして十数個程度の範囲での平均的な染色パターンの分布は精度よく予測できていることがわかったが、細胞核の域に依存するような細かい構造の再現は困難であることを示し、「多元計算解剖学」第4回国際シンポジウムにて発表した。また、それぞれの画像から抽出された特徴パターンを主成分分析によって解析することによって、主に組織内の細胞核の密度に比例する特徴ベクトルの抽出に成功した。画像の単純なピクセルの画素値に基づく主成分分析と比べて、よりMT染色の度合いに比例した分布になっていることから、細胞の分布や構造に基づいた特徴が抽出できていると言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの研究では、直接HE染色からMT染色のパターンを予測し変換するための深層学習モデルのほかに、HE染色の組織画像の特徴を抽出し、情報を圧縮しながら画像を再現するオートエンコーダー、同様に、MT染色の組織画像の特徴抽出を行うオートエンコーダーを開発し、異なる画像の間の変換を行うネットワークを追加してその相関を学習させることで、HEからMTへの変換に必要な特徴が画像のどのような要素に含まれているかを解析した。この変換ネットワークの主成分分析により、HE染色の組織画像全体から、繊維化の進行度を予想して強調表示されたヒートマップを表示するアルゴリズムを構築した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はこの手法をもとにした特徴抽出モデルを元に、がんの進行ステージの異なる複数のマウスのサンプルに対して学習を行うことで、HE染色の画像から組織の状態を分類するクラス分けモデルの構築を行う。また、利用可能なサンプルが得られれば、ヒトの患者の組織画像を元にした学習を行うことを視野に入れている。またさらに、MT染色の予測ネットワークの構築に用いた手法を、細胞の分裂の活発さを示す指標として使われるKi67による免疫染色の画像など複数の免疫染色の画像に対して適用することで、膵がんの組織の領域ごとの悪性度などを予測するモデルを構築し、診断支援に利用できる指標の開発を目指す。
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