2017 Fiscal Year Annual Research Report
Study on the temporal change of inland seismicity after the 2011 Tohoku-oki earthquake
Publicly Offered Research
Project Area | Crustal dynamics-Unified understanding of intraisland deformation after the great Tohoku-oki earthquake- |
Project/Area Number |
17H05309
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
内田 直希 東北大学, 理学研究科, 准教授 (80374908)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 内陸地震 / 東北地方太平洋沖地震 / 応力変化 / 余効変動 / 地震活動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、東北地方太平洋沖地震による複雑な地震活動の時空間変化について、東北沖地震およびその後の余効変動による応力変化の推定等をもとに、複数考えられる地震活動変化の要因を切り分け、震源域周囲の長期的な地震発生ポテンシャルの評価に役立てる。本年度の研究成果としては、東北沖地震前後のよるスラブ内地震の発生を、β統計量およびETASモデルを用いて調べた。その結果、東北沖地震前には前兆的な変化は見られなかった。しかし、東北沖地震後、やや深発地震の2重面の上面の地震について増加が見られた。上面の地震はプレートのunbendingに関係する沈み込み方向に圧縮の力で起きていると考えられており、東北沖地震の地震時および地震後のすべりによる圧縮力の増加により東北き地震後の地震活動の増加は説明できる。(Delbridge et al., Geophysical Research Letters, 2017)。この結果は、上記の解析領域では応力変化が地震発生変化の主要因となっていることを示す。東北地方内陸浅部の地震活動については、東北沖地震後の広域の地震活動の時空間的特徴をβ統計量を用いて検討した。その結果、宮城県から山形県にかけての東北沖地震による大すべり域の西側では、東北沖地震直後は所々スポット的な地震活動の増加が見られた。この活動は比較的はやく減衰しており、過去の研究も合わせると、この活動には流体の関与した可能性が高い。一方広域に見ると、2013年以降は地震活動度が東北沖地震前よりも低下していることがわかった。これは、全体的には逆断層場である東北地方に、東北沖地震およびその後の余効変動により引っ張りの力が加わったことで説明できる。ただし、福島県や岩手県では、2013年以降も活動が活発な場所があり、今後検討が必要である(Uchida et al., AOGS, 2018 で発表予定)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
東北地方内陸の地震活動変化の要因解明に向け、昨年度はやや深いスラブ内地震の結果について研究を進め、論文として発表した。この成果は内陸浅部の地震活動との比較対象として重要である。また、深さ25km以浅の内陸の地震活動の変化について精査した。その結果、東北沖地震前後の東北地方内陸の広域の地震活動が時空間的に不均質に変化していることを明らかにした。これは、今後、地震時・および地震後の応力変化の推定結果と比べるための重要な基礎資料となる。この成果については、地殻ダイナミクスの研究集会で発表し、議論が進んだ。応力変化については、11月に研究協力者のYan Fu博士を訪問し、最新の応力変化計算状況と課題について議論と確認をした。博士の協力により、予定していた粘弾性構造モデルによる東日本の応力変化推定を得ることができた。これは、東北沖地震時および地震後の時間変化する応力変化の値で、地震活動と比べることで、地震活動変化の要因の切り分けに役立つ。また、成果の取りまとめ方について議論し、応力変化の推定に主眼を置いた論文と地震活動変化に主眼を置いた論文にまとめ、投稿することで一致した。このほかYan博士とは、国際学会(iaspei)の際にも打ち合わせを行った。また、12月には研究協力者のBurgmann博士を訪問し、研究の進め方に関する打ち合わせを行い、合意することができた。地震活動の時空間的特徴と応力変化の比較については、全体的な特徴の照合を行い、2013年以降の活動についておおよそ応力変化と対応していることが明らかとした。今後はこれを地域ごとに細かく見ていくこと、地震活動および応力の時間変化の特徴について、定量的に調べていくことで最終的な地震活動変化の要因解明につながると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、昨年度得た東北沖地震後の広域の地震活動の時空間的特徴についてより詳細に検討する。具体的には、地域間の特徴の違い、地域ごとの応力変化と地震活動の対応関係などについて調べ、地震活動変化の要因の解明を進める。推定の際、水平および鉛直方向の空間グリッドの最適化を行い、各地点での地震活動の時間変化を精度よく求める。本年度は特に、時間的変化のパターンの違いに注目して研究を行う。これにより、東北沖地震後の余効変動による応力の時間変化との比較が可能になる。また、地域ごとの詳細解析では特に地震活動の活発化が見られた岩手県および茨城県北部に注目した解析を行い、情報を抽出する。 研究協力者である、Hu博士とは、緊密に連絡を取り、繰り返し地震データや海陸の地殻変動データの活用も検討し、最新の応力変化計算の成果を研究に用いることができるようにする。 地震時・地震後の応力変化(ΔCFS)の推定は、活断層研究会(1991)および地震調査研究推進本部による活断層の長期評価をもとにコンパイルされたものについては、昨年度評価が終わったので、今年度は、すでに発生したメカニズムがわかっている地震について検討を行う。得られた広域の地震活動変化と剪断応力および法線応力の変化等から、断層の摩擦係数や間隙水圧の影響の推定も行う。また、東北沖地震前の応力場や他の地質学的、測地学的特徴との比較も行うことで、東北沖地震による応力変化以外の地震活動を決定する要因についても検討を進める。期間中に研究協力者を訪問し、打ち合わせ・進捗検討を行うほか、米国地球物理連合秋季大会(AGU)やJpGUの際も打ち合わせを行う。得られた成果は、学会や研究集会等で発表するほか、応力変化の推定に主眼を置いた論文と地震活動変化に主眼を置いた論文にまとめ、投稿し、広く成果を発信する。
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