2018 Fiscal Year Annual Research Report
中速度領域における摩擦への温度効果と地震発生直前のプロセス解明
Publicly Offered Research
Project Area | Crustal dynamics-Unified understanding of intraisland deformation after the great Tohoku-oki earthquake- |
Project/Area Number |
17H05311
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
澤井 みち代 千葉大学, 大学院理学研究院, 特任助教 (20760995)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 中速摩擦強度 / 摩擦発熱 / 温度効果 / ドレライト |
Outline of Annual Research Achievements |
大地震の発生時には断層が高速・大変位運動するため、断層内部に顕著な摩擦熱が発生する。その摩擦熱に起因した断層内部の物理化学プロセスによって、地震時の断層強度やすべり挙動が支配されていることが、今世紀に入って明らかになってきた(例えばRice, 2006)。地震時の断層挙動に対する温度の重要性が広く認識される一方、震源核が形成され地震発生時のすべり速度に至るまでの中速領域(秒速数mm~秒速数cm)に対する温度効果の見積もりはこれまでほとんどなされてこなかった。しかし、震源核が形成され断層破壊が伝播しても、それが大地震に繋がるか否かの鍵を握るのは地震発生直前の中速度領域での摩擦特性である。そこで本年度は、本研究計画の中核を担う低温~高温条件下での中速摩擦実験を実施し、岩石の摩擦特性や摩擦発熱が背景温度の変化に伴いどのように変化するのかを検証した。 実験には比較的熱破壊に強いベルファスト産ドレライトを使用し、千葉大学設置の回転式高温摩擦試験機を用いた。その結果、ドレライトは、少なくとも500 ℃までの温度条件では、地震時の高速すべり条件下では、温度が高くなるにつれて速度弱化が始まる速度がより低速側にシフトすること、さらに高速領域において背景温度が高くなるほどすべり弱化距離が小さくなる傾向があることが明らかとなった。これは、断層がすべる際に同じ速度であれば高温の方がよりすべりやすいことを示すものであり、地震が発生し破壊が伝播する際に、より温度が高い深部へと先に破壊が伝播する可能性があることを示唆するものである。また、摩擦発熱量については、低速では背景温度によらず変わらないのに対し、高速領域では背景温度が高くなるにつれ小さくなる傾向がみられた。これは摩擦係数が小さく摩擦発熱が抑えられていることによる可能性が考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、当初予定していた千葉大学設置の回転式高温摩擦試験機を用いた低温~高温摩擦実験をおこない、岩石の中速度域摩擦特性および摩擦発熱に対する温度の効果を検証し、さらにそれが地震時の断層運動に与える効果を考察している。実験には比較的熱破壊に強いドレライトを使用し、摩擦特性だけでなく摩擦発熱量に対する背景温度の効果を得ることに成功した。成果は随時学会等で発表していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は本研究課題を推進すべく、比較物質を対象に引き続き摩擦実験をおこない、岩石の中速度域摩擦特性に対する温度効果の有無についてさらに詳しく検討していく。実験にはこれまで同様、千葉大学設置の回転式高温摩擦試験機を使用し、実験試料には庵治花崗岩を用いる。これまでの摩擦実験では物質の違いが地震活動の違いを支配しているという考えのもと地震の安定性などが議論されてきた。既に実施したドレライトと実施予定の花崗岩は構成鉱物が異なることもあり、両者の実験結果を比較検討することで、中速摩擦特性に対する温度効果に物質の違いが与える影響も議論できると考える。
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Research Products
(7 results)