2017 Fiscal Year Annual Research Report
沈み込み帯マントルウェッジ捕獲岩中の塩水包有物に溶存するイオンの定量分析
Publicly Offered Research
Project Area | Crustal dynamics-Unified understanding of intraisland deformation after the great Tohoku-oki earthquake- |
Project/Area Number |
17H05314
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川本 竜彦 京都大学, 理学研究科, 助教 (00303800)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 水岩石相互作用 / 流体包有物の化学組成 / LA-ICP-MS / マリアナ / カスケード / 海水の循環 / 交換分配係数 / 高圧実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
ピナツボ火山から採取したマントル捕獲岩中の流体包有物は主に塩水と炭酸塩鉱物からなり、硫酸塩鉱物と硫酸塩イオンが少量含まれている。本研究課題では、LA-ICP-MSを用いて流体包有物の分析を行い、ナトリウムとカリウムの重量比を得た。それは海水のそれよりもカリウムが多い。また、この流体包有物のNa/K比を、これまで島弧と背弧海盆玄武岩の研究により沈み込む海洋プレートからマントルに付け加わったと推定されてきた水流体コンポーネントの組成と比較した。それによると、流体包有物のNa/K比は、Stolper and Newman(1995, EPSL)が推定したマリアナ海盆のNa/K や、Grove et al. (2002, CMP)が推定した カスケード(シャスタ山)のNa/K よりもややカリウムに富んでいる。また、Le Voyer et al. (2010, J Petrol)がシャスタ山で推定した 2種類のスラブ由来流体 (水流体とメルトまたは超臨界流体)の間の値を持つ。なお、彼女らの推定値はShinohara et al. (1989, GCA)が高圧実験で求めたかこう岩マグマと水流体の間のNa/Kの交換分配係数と調和的な値である。 本研究の流体包有物も既往研究のこれらの流体も、それぞれ海水に由来すると考える(Kobayashi et al., 2017, EPSL)が、その組成は水と岩石の間の反応の程度により変化するだろう。水流体とマントル鉱物の間でカリウムとナトリウムの交換反応が起こるはずで、マントルのケイ酸塩からはカリウムが水流体に入り、同時にナトリウムはマントルに出て行くだろう。塩素はマントルを構成するケイ酸塩鉱物にはほとんど入らないので水流体に入り、塩濃度は上昇するだろう。これらの水ー岩石の相互作用をどのように理解すべきか、簡単ではないが考えて行くことが重要だ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
流体包有物のナトリウムとカリウムの存在比を測定することができた。マントルの流体包有物のナトリウムとカリウムの存在比を測定した研究例はこれまでにない。本研究によって得られたデータを、従来の研究によって噴出した岩石の組成をもとに推定されてきたスラブ起源流体の化学組成と比較することで、沈み込み帯深部での水流体の化学組成とマグマの化学組成に関し議論を深めることが可能になった。
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Strategy for Future Research Activity |
流体包有物のナトリウムとカリウムの存在度の比を測定することができたのは良かったが、塩素の分析は想定した通り難しいことも確認した。今年度は塩素の分析方法を改良することで、流体包有物の塩濃度をよりよく理解することを目指したい。今後、塩素分析で深みにはまる可能性があるので、塩素分析に成功する前にナトリウムとカリウムのデータに関してだけでもとりまとめて公刊したい。
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Research Products
(11 results)
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[Presentation] Volatile element transport within a closed system constrained by halogens and noble gases in mantle wedge peridotites2017
Author(s)
Masahiro Kobayashi, Hirochika Sumino, Keisuke Nagao, Satoko Ishimaru, Shoji Arai, Masako Yoshikawa, Tatsuhiko Kawamoto, Yoshitaka Kumagai, Tetsuo Kobayashi, Ray Burgess, Chris Ballentine
Organizer
日本地球惑星科学連合大会
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