2017 Fiscal Year Annual Research Report
An experiment explaining the ascent and descent of magmas accumulating beneath mountains after large earthquakes
Publicly Offered Research
Project Area | Crustal dynamics-Unified understanding of intraisland deformation after the great Tohoku-oki earthquake- |
Project/Area Number |
17H05316
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
並木 敦子 広島大学, 総合科学研究科, 准教授 (20450653)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 誘発噴火 / マグマ / 山体 / 応力場 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は山体が作る応力場がどのようにマグマの移動に影響しているかを明らかにする事を目指している。H29年度は2年計画の初年度であり、現時点て研究期間の半分が経過した事になる。現在までのところゲル状物質を用いた振動実験により巨大地震が発する地震波による揺れと山体が共振した場合のマグマ溜まりの挙動について検討している。具体的には、山体の形をした容器を用いて寒天溶液を固める事で山体の形をしたゲル状の寒天を形成した。ここにマグマの模擬物質となる浮力を持った流体を注入し、その移動を観察した。浮力を持った流体として水と空気を用いている。浮力を持った流体の振る舞いと震動により山体が作る応力場の関係を観察する事で山体が作る応力場がマグマを移動させる条件と移動の方向を明らかにした。応力場は偏光板を用いる光弾性により可視化した。その結果、浮力を持った流体と山体との密度差が十分大きく、また、流体が山体の麓付近の浅い場所にある場合には、この流体は上昇し得る事がわかった。一方、流体の密度が山体と近い場合には、この流体は水平移動もしくは下降することも観察された。この結果は、マグマ溜まりの深度と密度によって、地震波による揺れがマグマを上昇させる事もあれば、マグマを水平移動もしくは下降させる得る事を示している。つまり、巨大地震が噴火を誘発するだけでなく、地震により噴火が妨げられる事を説明するメカニズムの1つであると言える。この結果は現在投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していたメインの実験結果の解析を終了し、これを論文としてまとめ投稿している。よって、概ね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、現在投稿中の論文を出版し、この論文の執筆を通して明らかになった問題を解決する事でこの説を裏付ける事を目指す。現在問題となっているのは、実際に天然の山体が共振するか否かである。山体が巨大地震による地震波と共振する為には0.1Hz以下の低周波の振動が複数回続く必要がある。その為には山体以外にも何か共振体があると考えられる。共振周波数が共振体のサイズで決まる事を考えれば、地殻が共振している可能性が考えられる。よって、地殻と山体を模擬した形状での数値計算を行い、共振がおきる条件について議論する。特に、共振により作られる応力不均質の絶対値と位置について検討を行い、マグマ溜まりの深さを考えた時にもっともらしいか、検討する。また、実際にそのような周波数でのゆれが観測されているか否かを明らかにする為に、巨大地震に伴う地震波の周波数特性を解析する。特に、火山地域において、観測された波形における共振の有無と、共振がその後の火山活動に与えた影響について検討する。 一方、地震に伴う静的応力場の変化がマグマの移動に与える影響に関しては、これまであまり定量的な議論がなされていない。マグマを含む板状のダイクやシルが応力場にそって進む事は知られている。東北地方太平洋沖地震のマグニチュードはMw9.0であり、これまでの経験からすれば、誘発噴火が起きてもおかしくない巨大地震である。しかし、地震により直接的に誘発されたと考えられる大規模な噴火は現在まで発生していない。観測によりこの地震はそのサイズにもかかわらず、広域応力場の主軸の方向は変えていない事がわかっている(Yoshida et al., 2012)。他の巨大地震に伴う変形が、静的応力場の主軸の方向を変え得るか否かについて検討する。
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