2017 Fiscal Year Annual Research Report
先端X線利用による回折結晶学の再構築
Publicly Offered Research
Project Area | Materials Science and Advanced Elecronics created by singularity |
Project/Area Number |
17H05328
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
西堀 英治 筑波大学, 数理物質系, 教授 (10293672)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 放射光 / 回折 / ナノ領域 / データ解析 / モデリング / X線自由電子レーザー |
Outline of Annual Research Achievements |
100ナノメータサイズの放射光ビームの利用研究を、イメージングやピーク位置検出から、原子配列を0.0数nm精度でけっていする構造解析的な手法に転換するための基盤技術開発を目的に研究を開始した。これを行うことにより、ナノサイズ領域の素子構造等を、表面緩和による原子変位や欠陥・歪なども含めて物性を議論可能な精度で解明できるためである。そして最終的に、このナノサイズ領域の回折のためのX線結晶学を再構築することを目標として研究を推進した。 まず、これまでに進めてきた粒子内の原子の配列を実空間でモデリングする手法については、分子同力学計算との組み合わせなどにより、表面の原子の緩和や、任意の歪を入れたモデルの計算も可能な方法へと拡張させた。この研究の一部については、8月に行われた国際結晶学連合の会合にて口頭発表で報告している。この部分については、様々なモデルと回折データの関係が明らかになりつつあり、研究が進んでいる。 また、100ナノメータサイズのデータ測定と解析については、X線自由電子レーザーSACLAのに共同研究者として課題を申請し、約半数が不採択となる倍率を勝ち抜き、2回のX線回折の実験を行うことに成功した。まだ、データ解析をしている段階であるが、当初想定した100ナノビームを効率的に利用することができていると現時点で感じている。 上記以外にも、結晶学を利用したいわゆる結晶構造解析の研究で複数の成果が上がっている。今年度は、関連成果のプレスリリースを4件行っており、内1件は我々が主体としてプレスリリースを行った。また、11月には日本結晶学会年会にて日本結晶学会学術賞を受賞し、受賞講演も行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初のデバイスを視野に入れた方向からは少し離れたものの、100ナノビームの利用については、想定外の幸運に恵まれ研究が進展しつつある。それは、X線自由電子レーザー(XFEL) SACLAの課題に共同研究者として2度採択され、実験したためである。昨年度まで世界に2施設しかなかったXFELでは、X線回折以外の分光や、高光子場など様々な分野の研究が行われており、一般の回折の研究での参画は難しい。この中で、破壊現象をテーマとしているが2度の実験を行うことができたことは、100ナノビーム利用において大きな知見を得ることに成功した。例えば、ナノサイズ集光では、集光点までの距離が短くなり、焦点合わせが難しいこと、見ている場所の判別が難しいことなどである。こうした知見は100ナノビーム利用で回折結晶学的な研究を進める際の障害になると思われる。 また、データ解析技術については、種に様々な形状の3次元ナノサイズ物体のモデリングを可能にするシステムの構築が進んだ。現状では異種の結晶構造を接合させた物体の作成や、歪んだ物体の作成など様々な形状での物体からの散乱を計算できるシステムが構築されている。この技術の進展は、完全結晶の周期性を乱す特異構造を解析するうえで必須の技術であるため、今後の応用が期待できる。事実、この研究を結晶学で最も権威のある国際結晶学連合の会合に申し込んだところ口頭発表に選ばれ注目を集めた。
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Strategy for Future Research Activity |
100ナノビームを利用した回折結晶学的研究については、X線自由電子レーザーを可能な限り利用して成果を上げていくことを目指す。固定試料のでの測定解析を目的視していたが、いざやってみると粉末回折、単結晶X線回折など通常のサイズのX線で可能な構造解析的手法の適用がまだまだ不十分な段階にあることを強く認識した。このため、まず、粉末回折、単結晶X線回折を実際に実施し、100ナノビームを使って原子配列を0.0数nm精度でけっていする構造解析的な手法を実行することを行う。この点については既にデータを測定して解析を始めている。実験上およびデータ解析上など様々な違い(例えばXFELはフェムト秒のパルス光であること)があるため、それらの解決をひとつづつ進めている。 現在は、結晶学と関連がそれほど深くないデータプロセッシングなどにおいて結晶学的手法を適用するために前処理に相当する部分に尽力している。これが済めば、十分に洗練された構造解析のソフトウェア群にそのまま入力値としていれることでデータ解析が実現できる予定である。 また、モデリングによるデータ解析については、固体素子の場合も含めて昨年度に構築したシステムをりようして解析に挑戦する。具体的には、上述した結晶学的手法での平均構造の導出されたデータと構造を用いて、歪等をいれつつ構造を最適化するシステムを構築する。
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