2017 Fiscal Year Annual Research Report
Development of precise ion implantation into nitride semiconductor and its application to integrated cirucit
Publicly Offered Research
Project Area | Materials Science and Advanced Elecronics created by singularity |
Project/Area Number |
17H05333
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
関口 寛人 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00580599)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 窒化ガリウム / 集積回路 / イオン注入 / トランジスタ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,過酷環境下(高温環境/放射線環境)において特性劣化の極めて小さな窒化物半導体(GaN)のみによって構成される集積回路の実現を目的として行われた。窒化物半導体(GaN)は耐環境性に優れた材料であり,高温環境下や放射線環境などの過酷環境下においても高い信頼性,長寿命なエレクトロニクスデバイスへの応用が期待できる。例えば,宇宙で使用される人工衛星や宇宙ステーションでは多くのエレクトロニクスデバイスが利用されるが,放射線による特性劣化や誤動作,素子の破壊が問題であり,この問題が解決されれば気象観測の信頼性,高速安定通信が実現される。東日本大震災で起きた福島原子力発電所の災害では内部の除染作業などのためロボットが投入されたが,すぐに半導体制御素子が破壊され操縦できなくなっている。窒化物半導体を用いた耐高温性/耐放射線性となる集積回路ができれば,安全・安心な社会に貢献しうる。 窒化物半導体における電子デバイスへの応用を見ると,ディスクリートデバイスとしての利用に限られていることが多く,集積化の視点で見ても電源回路におけるインバータなどの簡易な回路形成に留まっており,多くの部分は従来技術であるシリコン集積回路と組み合わせることで達成されている。GaNのみを用いた集積回路の実現のためには少なくともエンハンス型およびディプレッション型MOSトランジスタを高い安定性・再現性で作製する技術の開発が求められ,その実現にはイオン注入技術の開発が鍵となる。 GaN集積回路の実現に向けて今年度は次の3つの課題について取り組んだ。①イオン注入法を用いた絶縁層の形成,②イオン注入によるpn反転チャネルの形成,③ノーマリオン,ノーマリオフ型MOSFETの実証の3つである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
GaNのみで構成された集積回路の実現に向けて,3つの課題に取り組んだ。 ①集積回路として各トランジスタの安定動作にはそれぞれの素子の電気的な分離が重要となるが,エッチングによる空間的な素子分離では電気配線の形成が難しいため,イオン注入法を活用した縁層の形成を検討した。イオン注入法によってB+(ボロンイオン)を注入したところ,注入していない場合に対して抵抗が9桁増大し,素子分離技術として有効であることが確かめられた。 ②ディプレッション型MOSFETの作製に向けてイオン注入によるpn反転チャネルの形成を試みた。酸化膜下にSi+(シリコンイオン)を注入したMOSダイオードを作製し,キャパシタンス―電圧特性評価を行った。Siイオン注入量に伴いC-V曲線の傾きに変化が観測され,界面にてキャリアが生成されていることが確認されたが,理想曲線には表れない変曲点の存在や大きな電圧シフトが観察され,イオン注入によるダメージ層が形成されている可能性が示唆された。実験のフィードバックを高めるため,従来の電気特性に加えて,光物性評価に着手し,2波長励起法によるPLスペクトルよる定量的なダメージの検討を始めた。 ③①,②での検討を踏まえて,p-GaNテンプレート基板にエンハンスメント型およびディプレッション型MOSFETの作製を試みた。高ホール濃度p-GaNに作製したために,特に課題は残ったものの,設計通りエンハンスメント型MOSFETはノーマリオフ動作およびディプレッション型MOSFETはノーマリオン動作が確認され,集積回路応用への可能性が示された。
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Strategy for Future Research Activity |
GaN集積回路の実現には,物性値から予測される特性をもつエンハンスメント型およびディプレッション型トランジスタの作製が求められる。そのためには,高い活性化率を有するイオン注入技術の開発と集積回路のためのプロセス技術の開拓が必要になる。 本年度はイオン注入の活性化を高めるため,結晶性回復技術としてのアニール条件を精密に調査するとともに,マルチサイクルイオン注入法の検討を進める。また集積回路の作製にはこれまで19乗台の高ホール濃度をもつp-GaNに形成していたために十分な特性が得られていなかった。昨年度集積回路実現に最適な16乗台のホール濃度をもつp-GaNが用意できたため,この基板を基礎にして集積回路の作製を進めていく。
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