2017 Fiscal Year Annual Research Report
非反転対称磁性体を舞台とした磁気・キラル協奏電子物性の創出
Publicly Offered Research
Project Area | Coordination Asymmetry: Design of Asymmetric Coordination Sphere and Anisotropic Assembly for the Creation of Functional Molecules |
Project/Area Number |
17H05350
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
谷口 耕治 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (30400427)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | キラル磁性体 / 非相反的光学効果 / 光学的電気磁気効果 / マルチフェロイクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、磁気・キラル協奏電子物性の開拓を行う舞台となる、強磁性とキラリティを併せ持つ非反転対称磁性体の設計・合成に取り組み、光学的電気磁気効果の観測を行った。具体的には、有機・無機ハイブリッドハライドに着目し、キラル有機アンモニウム分子が挿入された銅塩化物の系の単結晶を、メタノール中で自己集積化させることで育成した。物性測定が可能な2 ×2 mm程度の単結晶試料の育成に成功した為、単結晶X線構造解析により結晶構造を決定した。その結果、銅塩化物層間に、キラルな有機アンモニウムカチオンが挿入された構造となっていることが分かった。空間群はキラリティと極性の両方を有する三斜晶系(P1)であり、空間反転対称性の破れが確認された。また極性に関しては、銅塩化物層内に[110]方向を向いた電気分極(P)が存在し、挿入する分子のキラリティに依存してPの向きが反転することを見出した。一方、10K以下の低温においては、強磁性転移に伴う磁化(M)の急激な立ち上がりが観測され、狙い通りに空間反転と時間反転対称性が同時に破れた系を得ることに成功した。得られた単結晶試料に対し、15 T超伝導マグネットを用いてVoigt配置で測定を行ったところ、k・(P×M) ≠ 0となる配置で方向二色性が観測された。また、光の進行方向周りに試料を180°回転させ、Pを反転させたところ、方向二色性の信号に符号反転が見られ、光学的電気磁気効果が観測出来ていることを確認した。 また、磁気キラル発光の測定系の構築にも取り組んだ。具体的には、ロックインアンプを用いた磁場変調分光の測定系を構築した。ロックインアンプや光学定盤など、必要な機材を揃え、光学系の構築、制御プログラムの作製などまでの作業が終了し、標準試料の発光スペクトルの測定テストまでを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究計画に予定していたように、有機・無機ハイブリッド銅塩化物の系において、強磁性とキラリティを併せ持つ新しい非反転対称磁性体を設計・合成することに成功している。また、物質の合成にとどまらず、二年目以降に予定していた、この試料を用いた光学的電気磁気効果の観測に成功するなど、研究目標である磁気・キラル協奏電子物性開拓まで達成することが出来た。一方の、磁気キラル光学効果の測定系に関しても、順調に構築が進んでおり、計画通りに研究が進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
有機・無機ハイブリッドハライドの系に関しては、ひとまず光学的電気磁気効果の観測という当初予定していた物性測定まで、初年度で実現することに成功した。そこで今後は、磁気・キラル協奏電子物性の観測が期待される、新たなキラル分子磁性体の設計・合成へと研究を進める。具体的には、Cu以外の遷移金属を用いた有機・無機ハイブリッドハライドでの物質開拓を試みる。また、磁気キラル光学効果の測定系も八割がた構築出来ている為、発光性のキラル希土類錯体を合成し、磁気キラル発光現象の観測を目指す。
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