2017 Fiscal Year Annual Research Report
高機能・高次非対称配位圏を生み出す革新的ヒ素アシンメトリー
Publicly Offered Research
Project Area | Coordination Asymmetry: Design of Asymmetric Coordination Sphere and Anisotropic Assembly for the Creation of Functional Molecules |
Project/Area Number |
17H05369
|
Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
井本 裕顕 京都工芸繊維大学, 分子化学系, 助教 (40744264)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 金属錯体化学 / 構造有機化学 / 有機元素化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ヒ素を不斉中心とする配位子を合成する手法を確立するとともに、得られた配位子を利用して高次・高機能な配位圏を構築することを目的としている。申請者はこれまでに、従来のヒ素化合物合成法の最大の課題であった、揮発性・毒性を併せ持った前駆体を利用する点を大幅に改善し、不揮発性の無機ヒ素化合物を出発原料として鍵となる合成中間体を得ることに着目し、有機ヒ素化学を広く研究してきた。 本年度の研究では、ヒ素配位子の基本骨格を効率的に構築するルートの確立とそれを駆使した多彩なヒ素配位子の合成を行った。具体的には、三酸化二ヒ素からトリブロモアルシンを生成する手法を開発し、新たなヒ素配位子へと展開することが可能となった。この手法によって得られたヒ素配位子を利用して、銅フリー薗頭反応に好適な触媒構造を明らかにし、機能性分子の効果的な修飾方法へとつなげることに成功した。また、求電子ヒ素試薬を系中で発生させる手法によって合成したアルサフルオレン誘導体を配位子として、白金(II)ジハロゲン錯体を種々合成した。その構造と固体燐光発光特性の相関を明らかにすることで、ヒ素錯体の高機能化の道筋をつけた。さらに、ヒ素配位子含有塩化金(I)錯体において金-金相互作用を利用した刺激応答性材料の開発にも成功した。この他にも、ジチエノアルソールを発光中心とする化合物が、化学修飾や酸化・配位などの様々な手法を介して発光色をチューニング可能であることを発見した。また、これまでに開発した手法を適切に組み合わせることによって非対称構造を有するヒ素配位子の合成にも既に成功している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度において、ヒ素配位子の合成ルートの確立と非対称構造を有するヒ素配位子の合成に成功した。これは当初計画に記載していた、「ヒ素配位子の実践的な骨格構築法の確立」が順調に進捗したことを示すものである。 ヒ素配位子を有する金属錯体の固体燐光発光特性や刺激応答性を見出すことに成功した。さらに、ヒ素配位子の構造と得られる錯体の物性の間に相関が認められ、ヒ素の配位化学に新たな展開をもたらすことができた。また、ヒ素配位子を合成する過程で見出された有機ヒ素化合物が強い発光性と錯形成などによるマルチモードでの発光色制御が可能であることを明らかにした。これらの成果は、当初計画にあった「含ヒ素錯体の高機能化」が順調に進捗したことを示すものである。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成30年度では、高効率固体燐光発光や触媒機能を発現するヒ素配位子に対して、不斉を導入する。得られた錯体から、非対称構造に起因するより高度な機能を見出すことを目指す。さらには、有機ヒ素化合物を重合することによって、ヒ素が生み出す配位圏を高度に集積化する。これらの検討において、保有する多彩なヒ素化合物を系統的にスクリーニングすることで、ヒ素の配位化学における構造-物性相関をより深く解明する。
|
Research Products
(23 results)