2017 Fiscal Year Annual Research Report
Research of Chiral Zinc Alkoxide Complexes for Asymmetric Amplification
Publicly Offered Research
Project Area | Coordination Asymmetry: Design of Asymmetric Coordination Sphere and Anisotropic Assembly for the Creation of Functional Molecules |
Project/Area Number |
17H05384
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
松本 有正 奈良女子大学, 自然科学系, 助教 (20633407)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | キラリティー / 有機合成化学 / 結晶構造 / CDスペクトル |
Outline of Annual Research Achievements |
不斉増幅現象は天然物のホモキラリティーの起源解明につながる科学全般から興味をもたれる現象であり,さらに不斉合成、不斉分割といった有機合成化学への応用も期待される重要な現象である。本研究は著しい不斉増幅を引き起こす唯一の不斉自己触媒反応であるピリミジルアルカノールを不斉触媒とするピリミジンー5ーカルバルデヒド類へのジイソプロピル亜鉛試薬の付加反応において、亜鉛アルコキシドの配位多量体構造が不斉増幅の鍵になっていることに着目し、その配位多量体構造をX線結晶構造解析、CDスペクトル、量子化学計算を用いて解明し不斉増幅の鍵となる配位構造を明らかとすることを目的としている。 不斉増幅を引き起こす唯一の不斉自己触媒反応であるピリミジルアルカノールを不斉触媒とするピリミジンー5ーカルバルデヒド類へのジイソプロピル亜鉛試薬の付加反応において、亜鉛アルコキシドの配位多量体構造をCDスペクトルを用いて精査し,スペクトルの興味深い温度,時間依存性を見出した。これは不斉増幅を引き起こす配位多量体の構造に関する重要な知見となることが期待される。またピリミジン以外の基質として不斉自己触媒反応となるキノリルアルカノールの亜鉛アルコキシドについてもCDスペクトルの測定を行い,ピリミジンとは異なったスペクトルの挙動を見出した。この結果は反応性の違いをCDスペクトルによる溶液中での構造の違いにより解明可能な事を示唆しており,不斉増幅のメカニズム解明への一助となると期待できる。 これらの研究成果は,国際学会および国内学会の招待講演として発表している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
不斉自己触媒反応の高い不斉増幅のメカニズムを解明するため,CDスペクトルを用いた不斉自己触媒として働く亜鉛アルコキシド錯体の溶液中での挙動の観測に成功している。さらにTD-DFT計算を用いたCDスペクトルのシミュレーションを行い,この亜鉛アルコキシドの会合体が溶液中では主に二量体構造で存在している事が示唆された。またこの亜鉛アルコキシドのCDスペクトルが温度による興味深い変化を起こすことを見出し,溶液中での会合状態が反応温度により大きく変化することを明らかにした。これは不斉増幅の特徴的な温度依存性を解明する手がかりになる結果である。さらに高い不斉増幅を示すピリミジルアルカノール亜鉛アルコキシド以外の基質についても検討を行い,中程度の効率を持つ不斉自己触媒となるキノリルアルカノールの亜鉛アルコキシドにおいてもCDスペクトルの測定を行い,ピリミジンの系では見られなかったスペクトルの時間変化の観測に成功している。このピリミジルアルカノールとの差異を検討することで,不斉自己増殖の活性に関する重要な要素が見出されると期待できる。 結晶構造解析による亜鉛アルコキシドの会合体の探索はこれまで高い不斉増幅を引き起こすピリミジルアルカノール亜鉛アルコキシドについて様々な結晶化に成功しており,本年度ではキノリルアルカノール亜鉛アルコキシドなど他基質での結晶化を試み,不斉増幅能の違いと,亜鉛会合体の構造の違いについて検討を行った。本年度はじめに代表者の所属の異動があり,結晶構造解析によるメカニズム解明の進展に少し遅れが見られるが,CDスペクトルの観測によるメカニズム解明は期待通りの成果が上がっており,おおむね順調に研究は進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでCDスペクトルを用いた亜鉛アルコキシドの会合体の観測に関して興味深い結果が得られている,今後は単結晶X線構造解析を用いた研究に重点を置きこのCDスペクトルで得られた結果のより深い理解につなげていく。 ・亜鉛アルコキシド錯体の単結晶X線構造解析 これまでの研究で,単結晶X線構造解析によるピリミジルアルカノールアルコキシドのアルキル亜鉛錯体の構造決定に成功している。この錯体はアルコキシドがエナンチオピュアであるかラセミ体であるかで構造が大きく異なる事に加え,ジイソプロピル亜鉛の当量や共存する溶媒の極性などで異なった錯体構造をとることが明らかとなっている。今後はピリミジルアルカノール以外の不斉自己触媒となる基質について中心に亜鉛アルコキシドの結晶化を試み,不斉増幅に重要な触媒構造を明らかとしていく。特にキノリルアルカノールの亜鉛アルコキシドについてCDスペクトに興味深い変化を見出しており,キノリルアルカノール亜鉛アルコキシドの化粧構造解析を中心に研究を進めていく。
・亜鉛アルコキシド錯体の溶液中での挙動の観測 溶液中での実際の会合状態を観測することは,反応メカニズムの解明に大きな進展をもたらすと期待される。前年度までの研究によりピリミジルアルカノールの亜鉛アルコキシドのCDスペクトルが興味深い温度依存性を示す事を見出しており,またピリミジルアルカノール以外に不斉自己触媒となるキノリルアルカノールについても興味深いスペクトルの挙動を見出している。今後はこれらの現象をさらに追求することに加えTD-DFT計算によるスペクトル予測と組み合わせて溶液中での亜鉛アルコキシド会合体の構造を明らかとし,触媒活性種の解明を進める。
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