2017 Fiscal Year Annual Research Report
次元性を制御した希土類錯体の異方性集積構造体の創出
Publicly Offered Research
Project Area | Coordination Asymmetry: Design of Asymmetric Coordination Sphere and Anisotropic Assembly for the Creation of Functional Molecules |
Project/Area Number |
17H05386
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
湯浅 順平 東京理科大学, 理学部第一部応用化学科, 講師 (00508054)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | キラリティー / 希土類錯体 / 円偏光発光 / 円二色性 / 多核構造 / 超分子 / 光化学 / 異方性集積構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は次元性を制御した希土類錯体の異方性集積構造体を創出することである。希土類錯体は大きな配位数をもち(n = 8~12)、また配位子と金属イオンとの結合に可逆性を有するといった錯体化学的な特徴をもつ。そのため希土類錯体には複雑な幾何異性体が存在し、また動的な構造転移を示す超分子構造を構築することが可能である。これまでに報告されている多核希土類錯体は1次元や3次現状に無限に伸長した配位高分子型の構造が多く、上述の錯体化学的な特徴から有限数の希土類イオン核と配位子から構成される“閉じた構造”を構築することは困難であると考えられてきた。本研究では、その成果として3座のキラル補助配位子[(R)-Ph-Pybox]とジケトナート配位子との配位子/配位子間の相互作用により、LnIII2L3型の前駆体錯体がLnIII4L6型の環状ヘリケート構造へと構造転移することを見出した。この環状ヘリケート構造はX線結晶構造解析によりその絶対配置を決定することが出来た。結晶構造解析の結果、キラル補助配位子の側鎖のPh基とジケトナート配位子との間に配位子ー配位子相互作用が形成されていることがわかった。またX線結晶構造解析の結果から、この配位子ー配位子相互作用の形成によりビスジケトン型の架橋配位子が環状ヘリケート構造をとるような配列に誘起され、環状ヘリケート構造が構築されることがわかった。配位子ー配位子相互作用は円二色(CD)スペクトルの誘起CDから確認することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた希土類錯体の異方性集積構造体の一つとして4核環状ヘリケート錯体の合成、単離、X線結晶構造解析をおこなうことに成功した。得られた成果は論文として公表することが出来た。これまでに報告されている多核希土類錯体は1次元や3次現状に無限に伸長した配位高分子型の構造が多く、上述の錯体化学的な特徴から有限数の希土類イオン核と配位子から構成される“閉じた構造”を構築することは困難であると考えられてきたが、本研究の成果により、希土類イオンを用いた合理的な錯体設計に基づく異方性集積構造体の構築法を見いだすことができた。以上の理由から、本研究はおおむね順調に進展していると判断することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
今回の研究で、成果として4核環状ヘリケート錯体の合成、単離、X線結晶構造解析に成功した(前述)。希土類イオンを用いた合理的な錯体設計に基づく異方性集積構造体の構築法を見いだすことができたため、今後はこの4核環状ヘリケート錯体を最小単位とする異方性集積構造体の構築をおこなう。具体的には、鏡像体関係にある4核環状ヘリケート錯体をそれぞれ合成し、これらをホモキラルおよびヘテロキラルな条件で相互作用させることで、ホモキラルおよびヘテロキラルな異方性集積構造体の構築をおこなう。
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