2017 Fiscal Year Annual Research Report
アシンメトリック金属イオン集積に立脚した新奇機能性分子群の創製
Publicly Offered Research
Project Area | Coordination Asymmetry: Design of Asymmetric Coordination Sphere and Anisotropic Assembly for the Creation of Functional Molecules |
Project/Area Number |
17H05391
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
近藤 美欧 分子科学研究所, 生命・錯体分子科学研究領域, 助教 (20619168)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 錯体化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
多核金属錯体は、金属イオンの種類・核数に応じた特異なスピン状態・反応性・光物性等を発現することが可能な極めて魅力的な分子群である。本研究では、申請者のこれまでの研究成果ならびに天然の金属酵素の構造にヒントを得、多核金属錯体中に非対称性を導入することで電子状態のチューニングを行い、新奇機能性材料の創製を目指すこととした。 本研究期間においては、研究者のグループにおいて開発された鉄5核錯体をテンプレートとし、構成要素である金属イオンの種類を変化させた異種金属5核錯体の創製を目指し研究を展開した。そのために、段階的合成法を用いた異種金属5核錯体の合成を試みた。まず、配位子置換速度の遅いルテニウムイオンと配位子との反応によりルテニウム単核錯体([Ru(Hbpp)3]3+)を合成した。次に、得られた単核錯体を配位子交換速度の速い2つ目の金属イオンと反応させることで異種金属5核錯体の構築を試みた。異種金属5核錯体の合成に当たっては金属イオンの種類・当量、添加物、塩基の種類、反応溶媒、反応温度、反応時間といった種々のパラメータを系統的に変化させたスクリーニング実験を実施し、最終的に目的化合物のみが選択的に得られる合成条件を決定した。その結果、Fe, Mn, Co, Cu, Znイオンを用いた場合に、異種金属5核錯体([Ru2M’3(bpp)6]3+(M = Fe, Mn, Co, Cu, Zn))が選択的に合成できることを見出した。そして得られたすべての錯体について単結晶X線構造解析を行い、望みの金属配置をもつ5核錯体が得られていることを確認した。また、得られた錯体の電気化学測定を行った結果、金属イオンの精密配置によりその酸化還元電位が大きく変化することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題で対象とする金属5核錯体の分子骨格内には2種類の異なる金属イオンサイトが存在する。それは、配位飽和な6配位構造を有する上下の2つの金属イオン(サイトA)及び配位不飽和な5配位構造を有する中央の3つの金属イオン(サイトB)である。よって、これら2つのサイトでは大きく性質の異なる電子状態・機能を発現することが可能になると期待できる。実際に鉄5核錯体においては、主にサイトAが電子移動反応の促進に、サイトBが化学反応の促進にそれぞれ寄与し、そのことが高い酸素発生能の達成に当たって非常に重要であることがこれまでの研究により判明している。 そこで平成29年度の研究では、これらの2種類の金属イオンサイトに対し金属イオンをアシンメトリックに集積させた非対称型5核錯体を選択的に合成する手法を確立し、5核金属錯体への非対称性導入を行うことを目標にした。研究実績の概要の項にも示した通り、段階的錯形成法を駆使することで、一連の非対称型5核錯体の選択的かつ系統的な合成に成功している。従って本研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で対象とする非対称型金属5核錯体は、金属核間の強い相互作用に由来した高い電子柔軟性を示し、それに応じた特異な反応性・光物性・磁性等の多岐に渡る物性の発現が見込まれる。そこで平成30年度の研究では、非対称型金属5核錯体の新奇物性の探索を行う。錯体の反応性に関して鉄5核錯体での触媒能評価と同様の手法を用いる。酸素発生反応のみならず各種多電子酸化還元反応に対する触媒能を網羅的に評価する予定である。いずれの物性探索に当たっても、物性測定の結果ならびに平成29年度の研究により得られた知見を活用し、分子構造を最適化し、最終的には望みの機能を有する材料の創出に最適な非対称構造を見極める。
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Research Products
(15 results)