2017 Fiscal Year Annual Research Report
Theoretical aspect of Higgs-Yukawa force in precision spectroscopy
Publicly Offered Research
Project Area | New expansion of particle physics of post-Higgs era by LHC revealing the vacuum and space-time structure |
Project/Area Number |
17H05405
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田中 実 大阪大学, 理学研究科, 助教 (70273729)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | アイソトープシフト / 同位体効果 / 原子内力 / キングの線形性 |
Outline of Annual Research Achievements |
Delaunayらによる先行研究において,原子・イオンのアイソトープシフト(isotope shift,IS)を用いて,ヒッグス湯川力を検出しようというアイデアが提案されています.QEDの範囲内で生じる通常のISとヒッグス湯川力によるISを分離するために,2種類の遷移のISの間に成り立つ「キングの線形性」を用いることがこの提案の核心です.線形性が成り立つ理由は,field shift (FS)と呼ばれる原子核の有限サイズ効果によるISが,質量数に依存する因子と遷移に依存する因子の積で書けるためです.ヒッグス湯川力や他の未知の相互作用によるISが加わると,一般にはキングの線形性が成り立たなくなります.従って,2種類の遷移について3つ以上の同位体ペアでISを測定して,線形性の破れを見ることで原子内に作用する未知の力の情報を得ることができます. 2017年度は,先行研究で用いられているカルシウムイオン(Ca)のISのデータに加えて,連携研究者の杉山氏らによるイッテルビウムイオン(Yb)のISのデータを解析しました.このYbのデータは先行研究のものとは異なる遷移で,これを用いたIS非線形性の解析は世界初のものです.Ca,Ybの双方について,現在の実験データからのIS非線形性への上限を求め,原子内に作用する未知の力を媒介する素粒子の質量と結合定数への制限を示しました.また,将来の実験で期待される感度についても明かにしました.さらにIS非線形性の媒介粒子質量依存性を解析的に調べ,先行研究とは異なり,質量の4乗で抑制されることを明かにしました.これと平行して,通常のFSの高次の項による線形性の破れを評価し,Ybの場合は将来の実験でそれが検出できることを示しました.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2017年度に解析を行なったカルシウムイオンとイッテルビウムイオンは,比較的精度の良いIS実験データが存在する軽い元素,重い元素の代表であり,その特徴を捉えることで将来のより多彩な元素の分析の基礎となる知見が得られました.また,解析的手法を開発したことにより,先行研究では曖昧な議論が成されていた点について,正しい結論が得られました.
|
Strategy for Future Research Activity |
2017年度の研究で,IS非線形性による未知の原子内力の探索は,媒介する粒子の質量がO(10) MeV以下の場合に感度が高いことが判りました.これを受け,今後はヒッグス粒子のような重い粒子ではなく軽い粒子による原子内力の探索を中心に研究を進めます. また,イッテルビウムイオンの場合は,IS非線形性による未知の原子内力探索は,高次FSによる非線形性で制限されていることが判りましたが,カルシウムイオンについてはこれは当てはまりません.カルシウムイオンの場合は,原子核の質量が有限であることによるIS(mass shift, MS)が重要になると予想されます.そこで今後はMSの高次の効果による非線形性について研究を行ないます.また,連携研究者と協力して,イッテルビウムイオンのIS非線形性について,理論と実験の両面から研究をさらに推進します.
|