2017 Fiscal Year Annual Research Report
海底水圧連続観測に基づく2011年東北沖地震震源域のスロースリップイベント活動
Publicly Offered Research
Project Area | Science of slow earthquakes |
Project/Area Number |
17H05411
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
太田 雄策 東北大学, 理学研究科, 准教授 (50451513)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | スロー地震 / 海底水圧計 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的である非地震性の現象を把握するためには,海底水圧計による連続的な地殻変動場のモニタリングがきわめて重要である.その一方で,海底水圧計には機器に依存した長期ドリフトが重畳し,特に長期的な地殻変動場の把握において大きな障害となっている.そのため平成29年度は海底水圧計が持つ長期ドリフトの特性を定量的に把握し,過去に観測したデータから地殻変動場を抽出することを目的として,海底水圧計の長期ドリフト特性把握を目的とした実験を行った.実験には産業技術総合研究所が持つ重錘形圧力天びんを用い,実海域を想定した70MPa (水深7,000mに相当) を生成し,それを海底水圧計に印加することで長期ドリフト特性の把握を行った.そして得られた長期ドリフト特性を用いて,同様の水深環境で過去に計測が行われた実データの補正を試みた.その結果,現場海域に投入直後を除いて,実水圧データの長期ドリフトがおおむね除去可能であることを確認した.その一方で実験室環境では海底水圧計は室温環境に設置されており,実海域の温度 (海水温) とはその環境が大きく異なる.そのため今後より現実に近い環境下で同様の実験を行い,海底水圧計の長期ドリフト特性の把握を目指す必要があると考える.さらに2011年東北地方太平洋沖地震前後の非地震性すべり等の特異的なイベントの探索を長期ドリフト特性を施したデータにもとづいて行い,本震前後のプレート境界の挙動の理解を進める.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的である2011年東北地方太平洋沖地震前後のゆっくり地震等を海底水圧計を用いて探索するためには,海底水圧計が持つ長期ドリフト特性の客観的な把握がきわめて重要であることが平成29年度中に研究を進める上で改めて明らかになった.そのため平行して実施していた海底水圧計の長期ドリフト試験データを精査することによって,ドリフト特性を一定程度室内で把握できる可能性があることを示すことができた.実海域データの精査にはまだ取り掛かれていないが,長期ドリフト特性の把握について一定の知見を得られたことは大きな進展であり,進捗はおおむね順調であると判断する.平成30年度は実海域データの精査による未知のイベント探索に注力するとともに,ドリフト特性の把握に関する実験データの整理も平行して行う.
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は主として2011年東北地方太平洋沖地震前後の海底水圧計データの精査による未知のスロースリップイベント等の探索を行う.また,平成29年度に一定の成果を得た海底水圧計長期ドリフト特性の把握についても継続して検討を進め,高い精度での海底水圧観測を目指す.
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