2017 Fiscal Year Annual Research Report
多環式アルカロイド群の化学-酵素ハイブリッド合成
Publicly Offered Research
Project Area | Creation of Complex Functional Molecules by Rational Redesign of Biosynthetic Machineries |
Project/Area Number |
17H05433
|
Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
大栗 博毅 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80311546)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 化学-酵素ハイブリッド合成 / 非リボソーム依存型ペプチド合成酵素 / テトラヒドロイソキノリンアルカロイド / ジョルナマイシン A / 迅速合成 / 酵素変換 / 長鎖脂肪酸側鎖 |
Outline of Annual Research Achievements |
サフラマイシンやエクテナサイジンに代表される抗腫瘍性テトラヒドロイソキノリンアルカロイド群は、複雑な五環性母骨格を共有する。北海道大学及川研究室で非リボソーム依存型ペプチド合成酵素 SfmC により五環性母骨格が一挙に構築される生合成機構を提案し、実験的に検証している。 本研究では SfmC を活用し、テトラヒドロイソキノリンアルカロイドを迅速合成する化学-酵素ハイブリッドプロセスを開発した。酵素反応の基質として、チロシン誘導体、アルキル鎖を有するペプチジルアルデヒドを設計・合成した。酵素 SfmC による五環性骨格の構築とアミノニトリルの導入、二級アミンに対する還元的アミノ化を実施した。酵素変換で得られる中間体を単離せずに連続的に官能基変換を施すアプローチにより、シンプルな合成基質からわずか一日で適切に官能化された五環性中間体を合成することができた。酵素変換に必要不可欠の長鎖脂肪酸側鎖をエステルの加水分解除去した後、キノンへ酸化し、天然物ジョルナマイシン Aの4ポット合成に成功した。酵素変換と化学合成を融合するアプローチにより、テトラヒドロイソキノリンアルカロイド群の簡便な合成法を確立することができた。
天然物の半合成を除外すると、化学合成と酵素合成はこれまでほぼ独立に発展してきた。本研究では、酵素による骨格構築と生理的条件下でも進行する官能基変換を融合したアプローチを追求している。非リボソーム依存型ペプチド合成酵素の A ドメインは、アミノ酸を識別して選択的に活性化するので一般に基質許容範囲が狭い。これに対し本研究で着目したSfmC-PSドメインは、Rドメインがチオエステルを還元して生じた遊離のアルデヒドを基質とする。そのため、Aドメインと比較するとPSドメインは、基質に対しての許容性を大幅に拡張できる可能性がある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
非天然型のアルデヒド基質/チロシン誘導体群の設計・合成した。酵素SfmCの精製法、ホロ化の工程を大幅に改善することができた。更に、酵素反応後に二級アミンをN-メチル化し第三級アミンとしてから単離する工夫により、酵素反応の効率と再現性を大幅に改善できた。これにより、末端に一級水酸基を有するテトラヒドロイソキノリンアルカロイドであるジョルナマイシンAの化学-酵素ハイブリッド合成に成功した。
|
Strategy for Future Research Activity |
アルデヒド基質を改変して本アプローチの適用範囲を拡大している。これにより側鎖の官能基を自在に改変し、他のテトラヒドロイソキノリンアルカロイド同族体群を柔軟に化学-酵素ハイブリッド合成するプロセスの実現を現在鋭意検討中である。 in vitro酵素変換で5環性骨格を一挙に組み上げる本プロセスはスケールアップが重要な課題となっている。本合成の有用性を向上させるため、酵素の大量発現や安定性向上についても検討を進める必要がある。
|
Research Products
(7 results)