2017 Fiscal Year Annual Research Report
シアノバクテリアを用いたストリゴラクトン高効率生産系構築と新規類縁体の創成
Publicly Offered Research
Project Area | Creation of Complex Functional Molecules by Rational Redesign of Biosynthetic Machineries |
Project/Area Number |
17H05451
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
渡辺 智 東京農業大学, 生命科学部, 准教授 (10508237)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | シアノバクテリア / ストリゴラクトン / 植物ホルモン |
Outline of Annual Research Achievements |
植物ホルモンであるストリゴラクトン(SL)はアフリカにおいて深刻な農業被害をもたらす根寄生雑草Strigaに高い効果を示す。SLは分解されやすく、植物からの分泌量も微量であるため、SLを安価かつ大量に生産する系の確立、および高活性のSL類縁体の創出が求められている。SLはカロテノイドの一種であるβ-カロテンを初発物質としてD27、CCD7、CCD8、およびP450ホモログであるMAX1の4酵素により主に葉緑体で合成される。本研究では、SL生産のホストとして、葉緑体の祖先生物であるシアノバクテリアに着目し、SL高発現系の構築を目指す。シアノバクテリアは葉緑体と酷似した代謝機能、そして生合成酵素の作業環境を有しており、前駆体であるβ-カロテンを高蓄積させている。さらに細胞内において植物型P450が機能することが保証されているため、シアノバクテリアにSL生合成遺伝子を導入すればSLまでの合成反応を一挙に進めることができると考えられる。 現在、シアノバクテリアSynechococcus elongatus PCC 7942における D27、CCD7, CCD8、そしてMAX1の発現系の構築を行なっている。SL合成が確認されているシロイヌナズナ、イネのCCD7, 8, MAX1(AtCCD7、AtCCD8、Os0900)に加え、中間産物である9-cis-β-カロテン合成活性を示す緑藻DunaliellaのD27相同遺伝子(DbD27)を人工合成し、それぞれS. elongatus 7942細胞内で発現させた。Os0900、DbD27は全長では発現しなかったため、膜結合領域やシグナル配列を含むN末端を欠損させ、C末端にHAタグを付加した発現系を構築した。その結果、Western解析よりDbD27およびOs0900がS. elongatus 7942細胞内で過剰に蓄積していることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでに4酵素(D27、CCD7, CCD8、MAX1)それぞれの発現株は構築したが、それらを合わせた株の構築には至っておらず、シアノバクテリア内での酵素活性も確認はできていない。この原因として、当初発現を試みたOsD27やOs0900が全長ではシアノバクテリア細胞内で発現不可能であったことが挙げられる。このため、D27については由来生物をイネから緑藻であるDunaliellaとし、さらにドメイン解析を行って必要領域を絞った上で発現させることでS. elongatus 7942細胞内での発現を達成した。また、Os0900に関してはN末端に存在する二回膜貫通領域を欠失することで、発現を確認できた。次のステップとしてDbD27、Os0900を中心に酵素活性を比較・解析しているが、DbD27に関しては現状では生成物である9-cis-β-カロテンの蓄積は確認できていない。また、Os0900に関しては酵素活性の測定系を検討中である。このような状況であるため、「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
大腸菌細胞内においてD27、CCD7、CCD8の活性を確認した上で、遺伝子発現系をシアノバクテリアに移植する。またシアノバクテリア細胞内でのβ-カロテン代謝経路の改変を行う。現状ではDbD27の活性は確認できていないが、9-cis-β-カロテンの蓄積を期待して、β-カロテン下流に位置するゼアキサンチン合成酵素CrtRの不活化を試みている。また、DbD27の逆反応による影響も考慮してDbD27とAtCCD7, AtCCD8共発現についても発現系の構築を行なっている。Os0900のS. elongatus 7942細胞内での酵素活性が認められない場合は、N末端の膜貫通領域が本当に必要ないか、まずカーラクトン(SLの中間産物)生産大腸菌で確認すると共に、他のP450酵素についても導入を検討する。
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