2017 Fiscal Year Annual Research Report
不斉生合成を指向したディールス・アルドラーゼの機能解析と新規デカリン誘導体の創製
Publicly Offered Research
Project Area | Creation of Complex Functional Molecules by Rational Redesign of Biosynthetic Machineries |
Project/Area Number |
17H05454
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
加藤 直樹 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 研究員 (90442946)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 天然物生合成 / 糸状菌代謝物 / 環化付加反応 / デカリン / エキセチン |
Outline of Annual Research Achievements |
不斉炭素に富んだ複雑な骨格は天然物の最たる特徴であり、立体化学が異なると生物機能が大きく変化する。よって、天然物の生合成経路において立体化学を規定する鍵酵素を特定し、その厳密な選択性を自在に操ることができれば、天然にはない立体化学を有する新規複雑骨格分子の創製が可能となる。本研究では、[4+2]環化付加反応を介した立体選択的デカリン形成を触媒する酵素Fsa2とそのホモログを対象に、それらの機能と構造を比較解析することで、Fsa2ファミリーに属する酵素が触媒する反応を分子レベルで理解することを目指している。 本年度は、複数のエキセチン類縁化合物の生産菌についてゲノム解読を行い、生合成遺伝子クラスターの候補を取得した。そのうち、Pyrenochaetopsis sp. RK10-F058株の培養物からphomasetinとその関連化合物を取得するとともに、ノックアウト実験を行うことで、phomasetin生合成遺伝子クラスターを同定した。遺伝子欠失株の解析の過程で得られる関連化合物の各種スペクトルデータを収集、比較解析した。そこに理論計算を組み合わせることで、絶対立体構造を含む、デカリン化合物の効率的な構造同定が可能となった。ノックアウト実験と代謝物解析から、fsa2ホモログであるphm7もまた立体選択的デカリン形成に関与していることを明らかにした。 本酵素ファミリーの結晶構造解析に向け、Hisタグ融合タンパク質の大腸菌発現系を構築し、組換えFsa2およびPhm7の大量精製に成功した。また、Fsa2が関与する反応について、モデル基質を用いたDFT計算を行うことで、非酵素条件下での反応経路および立体選択性に関する知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. 4種類の立体化学の各々複数のエキセチン類縁化合物の生産菌についてゲノム解読を行い、生合成遺伝子クラスターの候補を取得した。ノックアウト実験を行うことで、fsa2ホモログを同定することに成功した。これまでに取得した関連化合物のスペクトルデータの比較解析により、効率的な構造決定が可能となった。特に、絶対立体構造の推定において、CDスペクトラムについては理論計算と実測値とを比較する方法を整備した。 2. Fsa2の関与する反応について、モデル基質を用いたDFT計算を行った。基質ミミックの合成については、SNAC体の合成が困難であることが判明した。その過程で得られた類縁体を用いて、in vitro反応を行うことを検討中である。組換えFsa2およびPhm7の大腸菌発現系を構築し、NiNTAアフィニティー精製により、精製酵素を取得した。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 異なる立体化学のデカリン形成に関与する遺伝子の探索を継続して行う。ゲノム解読を追加して行うとともに、異宿主生産による解析も試みる。 2. Phm7や新規に取得するFsa2ホモログの関与する反応についても同様にDFT計算を行い、反応経路、立体選択性についての情報を収集する。合成した基質アナログを用いてin vitroでのFsa2活性の検出、反応速度論的解析を行う。加えて、fsa2とfsa2ホモログのスワッピング実験を行い、非天然型の立体化学を有するデカリン誘導体の取得を試みる。 3. Fsa2およびそのホモログの結晶構造解析を行う。次いで、反応産物、または合成基質アナログを用い、共結晶構造の取得を試みる。取得が困難な場合は、ドッキングシミュレーションを行うことで、基質との相互作用に関わるアミノ酸残基を同定する。得られる実験データを理論計算に反映させることで、酵素が制御する反応メカニズムを詳細に解析し、その解明を目指す。
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