2017 Fiscal Year Annual Research Report
光渦を用いたナノシートコロイド中のキラルな環境場の創出
Publicly Offered Research
Project Area | Nano-Material Manipulation and Structural Order Control with Optical Forces |
Project/Area Number |
17H05466
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
鈴木 康孝 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (30634753)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 光マニュピレーション / 光学材料 / 非線形光学 / ナノシート |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ナノシートが単層まで剥離した分散液(ナノシートコロイド)を試料として、コロイド中に分散した単一のナノシートをレーザートラッピングの技術を利用することで、非侵襲、非接触に光によって自在に操作することを目指している。 試料としては、光との相互作用が強い屈折率が2.3程度のニオブ酸ナノシートを用いた。また、光源としては、対物レンズによって集光した直線偏光の連続発振の532nmのレーザー光を用いた。顕微鏡を用いて光学系を作成し、光マニュピレーションのために適切な光学パーツの選定、光学系の最適化にも取り組んだ。 本年度で明らかにできたことは、濃度の低いナノシートのコロイド中に直線偏光のレーザー光を入射することで、焦点においてナノシート1枚がトラッピングされること。また、トラッピングされたナノシートはレーザー光の偏光の向きに沿って配向することである。この研究成果は、査読付きの学術論文として1報出版されている。また、高い濃度のナノシートコロイドに直線偏光のレーザー光を入射すると、焦点の大きさよりも100倍大きなナノシートの配向変化が生じることを明らかにした。また、この焦点外に及ぶナノシートの配向変化の大きさは、レーザー光を集光するレンズのN.Aによって変化することも明らかにした。これらの成果は、査読付きの学術論文として2報出版された。そのなかでも、1報は、ACS photonicsという、光学の分野でもハイインパクトな雑誌に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度だけで、すでに3報の学術論文を出版することができた。中でも1報は、ACS photonicsというインパクトファクターが6.7程度ある光学のジャーナルの中でもハイインパクトなジャーナルに、論文を掲載できた。1年間で、3報の学術論文を投稿、出版できたことから、研究は概ね順調に推進できていると考えている。また、研究成果を市民に向けて発信するために、山口大学内において、記者会見を開いた。その結果、山口地方のローカルテレビのニュース、地方新聞の記事に取り上げられた。以上のように国民への情報の発信も十分に行えたと考えている。これらの成果は、1回の国内会議、2回の国際会議でも報告しており、国内のみならず、国外の研究者にも研究内容のアピールを行った。
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Strategy for Future Research Activity |
自身の研究課題の推進は、概ね順調に行えているが、平成29年度においては、共同研究論文を報告できなかった。そこで、特に平成30年度においては、共同研究の推進に力を注ぐつもりである。領域会議や、国内外の研究会を通して、新学術領域内の研究者との議論の機会を増加させ、お互いの議論を深めながら、共同研究の成果が順調に得られるように研究を進めていく。特に、ナノ粒子の開発、光による物質操作、光圧のシミュレーションの研究者との共同研究を進める。電話、メール、SNSでのコンタクトを行うことは、もちろんのこと、それぞれの研究室への訪問も複数回行いながら共同研究を進める予定である。 また、自身の研究課題においては、平成30年度は、Structured lightの利用を積極的に行う予定である。平成29年度は、特にレーザー光の中でも、最もベーシックな直線偏光を用いてコロイド中のナノシートの光操作を行うことで、光圧がコロイド中のナノシートへ及ぼす影響、ナノシートの光マニュピレーションのメカニズムの理解が大きく進展した。この知見を基盤として、スピン角運動量を有する円偏光、光渦を用いてコロイド中様々なナノシートの配向変化構造を誘起していく。研究上、予期しないことが生じた場合は、領域内メンバーとの共同研究を利用しながら、研究を推進するつもりである。領域内メンバーとは、日頃から頻繁にコンタクトしており、いつでも研究の相談ができる体制を既にとってある。
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