2017 Fiscal Year Annual Research Report
Co-education on electronic structure evaluations with synthesis groups working on Mixed Anion compounds
Publicly Offered Research
Project Area | Synthesis of Mixed Anion Compounds toward Novel Functionalities |
Project/Area Number |
17H05478
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
前園 涼 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (40354146)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 第一原理計算 / 技術移転 / 人材育成 / フォノン計算 / 電子状態計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
第一原理電子状態計算による基礎物性解析(状態密度解析、分散図解析、格子振動解析)は、物性解析における「枯れた解析技術」として定着が急速に進みつつある。代表者らの此迄の研究により、スパコンなど大規模計算機上に手順が十分にルーチン化され整備されている。本研究では、代表者らが産学連携や外部協働を通じて培った遠隔サーバ利用促進と実験実務者向けの教程を活用し、領域内で主に合成に取組む若手研究者を対象に、本解析ルーチンと遠隔利用技術を指導/普及させ、当該領域の研究期間中に期待される新規複合アニオン物質に対し、現場の合成実験家が、いち早く自らの手で電子状態計算解析も含めて世界で最初に発信できるよう技術移転を図ってきた。基盤研究との徹底した差別化を意識し、理論方法論としての独創性追求は別資金プロジェクトに押し込め、定形の基礎物性計算(全協働に共通するバンド分散/フェルミ面/フォノン分散/構造安定性といった評価)を「理論研究からスピンアウトすべきツール」とプラグマティックに捉え、「理論家の手を離れても自律的に廻る技術移転」を目標に据えた。別主務(実験)を持つ研究者が、副テーマとして計算に携わる際のモチベーション維持の重要性を考慮し、そのための仕掛けや、サーバ・ログ管理教育に一定の重点を置いて研究を遂行した。初年度は、電子状態計算チュートリアルワークショップを、国内で2件(JAIST開催、領域内から9名の参加[東工大/京大/東大])、海外で2件(イタリア/インド開催、領域内から2名の参加[京大])開催し、実験グループ学生のシミュレーション実習機会を提供した。合計8件の協働教育申入れを受け入れ、うち4件は、共著原著論文成果に繋がっている(うち2件が採録済/JACS/Inorg.Chem.)。H29年度末の領域シンポジウムでは、若手スクールにて電子状態計算の利用法を中心とした講演を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
技術移転と人材育成を主眼に置いた研究計画であったため、成果が実を結ぶまでに、少し時間が掛かるものと想定したが、原著論文成果が、予想以上に速く出揃ったものと評価している。4本の原著論文成果のうち、2本は協働先グループではなく、報告者グループ側大学院生による計算実務遂行であったが、これも間接的ではあるが、シミュレーション協働教育の機会増加により、研究グループ内での教程整備が急速に進んだ結果、グループ内所属の新しい大学院生も、より速くシミュレーション実務に到達出来るようになった点が一つの要因である。理論/方法論コミュニティでの研究取りまとめ速度に対して、より速報性を争う実験合成系の研究ペース、特に原著に取りまとめるペースが非常に速く、良い意味で、このペースに巻き込まれて研究を進める事が出来た。電子状態計算シミュレーションの根幹部分にある方法論は、本課題の根底にもあるように、十分よく「枯れて」きており、高速計算の普及と相俟って、今後、より材料開発の実験研究との協働という応用方面での展開を標榜する上においては、このような「速いペースに寄り添う」という信頼感を勝ち取る事は非常に重要である。この意味で、今後、この方面で活躍を期待される報告者グループ側の大学院生達にとって、本協働が非常によい研究環境を与えており、元来、「実験グループ側の学生を教育する」という趣旨の研究提案であったものが、図らずも、「シミュレーショングループ側の学生に対する、よい教育機会」となっている事を見出している。本領域でのシンポジウムやニュースレターなどの告知活動が活発になされている事も、別要因として挙げられる。あるグループとの協働成功事例が挙がると、この事が速やかに知れ渡り、次々と別グループからの協働が持ちかけられ、かつ、こうした協働が奨励される運営体制となっており、本公募班参画に対する、大きな有難味を感じている。
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Strategy for Future Research Activity |
「基礎物性計算フェーズ/物質構造モデル(混晶モデル/界面の周期境界モデルなど)を立て、バンド図や格子定数などを算定、実験値との比較較正で正当性検証する基盤を確立する」、「応用物性計算フェーズ/上記基盤の上にプログラムパッケージ機能を駆使し、フォノンやスペクトルの計算を展開、もしくは、多体論的詳細スペックを調整し磁性などを議論など」の「2フェーズへの切分け」を意識し、後者に属する「各計画班個別での遂行事項」とは区別して、「本課題での遂行事項」には全プロジェクトでの共通基盤事項のみに傾注し、引き続き、技術移転普及を図る。「コンセプト教育(電子状態計算での基底関数/擬ポテンシャル/交換相関汎関数/分散図解析といったコンセプトの再確認」、「技術教育(スクリプト利用/UNIX/大型計算機や並列計算での概念とスペック)」、「協働体制教育(遠隔ツール利用/計算科学研究でのログ管理)」に関する技術移転を進める。「A/連携先(実験)学生が代表者グループに短期滞在し、電子状態計算のチュートリアルを受ける」、「B/代表者グループメンバーが連携先に滞在し、遠隔アクセスの情報環境を整える」、「C/代表者グループが開催する電子状態計算スクールに連携先学生が参加」といった内容で進める。多数の協働を確実に回すため、計算実務を「手法エキスパート側」が背負い込むのではなく、各「対象エキスパート」たる協働先大学院生に計算実務を技術移転し人材育成を図るという点に留意して進める。初年度実施内容の協働成果が領域内でよく広告された結果、今年度も、既に新たに1件の申し入れがあり、今後も継続して技術移転活動を図っていく。今年度は更に、フォノン計算についても標準教程化し、この手法のソリューションをわかりやすく提示することで、協働事項に盛り込んで進めていく。
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