2017 Fiscal Year Annual Research Report
強相関複合アニオン化合物の特異な多軌道性と量子揺らぎの動的平均場理論による研究
Publicly Offered Research
Project Area | Synthesis of Mixed Anion Compounds toward Novel Functionalities |
Project/Area Number |
17H05481
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
越智 正之 大阪大学, 理学研究科, 助教 (10734353)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 電子状態計算 / 有効模型 / 複合アニオン化合物 / 強相関効果 / 熱電効果 / 超伝導 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画は、複合アニオン化合物の非自明な電子状態を理論的に解析することを通して、高機能物性の発現を目指し、さらには新しい物質設計を目指すものである。本年度の成果のひとつは、高い熱電性能を持った複合アニオン化合物を理論設計したものである。対象はLnOPnCh2であり、これはLaOBiS2のように超伝導体としてもよく知られており、近年は熱電物質としても注目を集めている物質群である。第一原理計算に基づいた理論解析の結果、Pnとして軽い元素を、Chとして重い元素を用いることでかなり高い熱電性能を示し得ることがわかった。これは擬一次元的gapped Dirac coneの構造に起因したものであり、一般的に優れた設計指針となりうる概念である。本成果はPhysical Review Applied誌に公開された。また別の成果として、複合アニオン化合物も含めてより広い物質群において、超伝導性を向上させるための理論設計指針を確かめた。これについては、次年度以降も現実の物質群においてどのような形で実現しうるかを調べていく。また、複合アニオンも含めた強相関物質を記述することのできる有効模型の解析も行った。van Hove特異点とフェルミ準位の関係について、強相関効果を入れた際にどのような変調が起きうるかを解析した。ここでは、研究題目にある動的平均場理論を用いた。さらに、新学術領域内の実験グループと連携することで、新規複合アニオン化合物の電子状態の理論解析を行った。その結果、たとえばバナジウム酸水素化物において特異な次元性や物質機能が生じうることが明らかになった。また、実験的に合成された新規熱電物質の示す物性の理論的評価をおこない、それがどのように解釈されるかも明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の想定以上に、様々な複合アニオン化合物の理論解析をおこなうことができた。そうした理論解析を通して、アニオンが複数存在することをどのように活かすかの設計指針に関するヒントも得ることができた。さらにその結果として、高機能物性の発現に関する理論的予言も具体的な物質に対しておこなうことができた。これらの研究は、熱電効果、超伝導、など様々な物質機能に関わるものである。また、新学術領域内の実験グループとの共同研究も当初想定以上に活発におこなうことができた。その一方で、当初想定していた研究計画自体とは少し違う方針の解析を進めたことになる。ただしこの点に関して、新学術領域内の実験グループとの共同研究を通して、当初計画で想定していた物質機能の発現を目指した物質設計をおこなうための道筋も見いだすことができたので、それを次年度以降に活かしていきたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度に見いだすことができた物質設計指針について、それをさらに推し進めた理論研究をおこなう。具体的には、熱電物質の理論設計について、他の候補物質においても同様の指導原理が適用できるかを検証する。その際には、第一原理計算を用いてその性能評価を理論的におこなう。また、高い超伝導転移温度を示しうる物質についても、理論的に様々な可能性を検証したい。特に、複合アニオン化合物ならではの多軌道性が関連した物理について、第一原理計算および有効模型の理論を用いた解析をおこなう。一般的に複合アニオンで生じる多軌道性は、通常の酸化物よりも複雑なものであり、その解析および物質機能発現のための活用は必ずしも容易ではない。また、複合アニオン化合物自体も実験的に未開拓な領域が広く、その物質機能についてまだわかっていないことも多い。そのため、理論的にも様々な方面からの検証を通じて、その非自明な物性を明らかにし、活用することを目指していきたい。
|
-
-
[Journal Article] Selective Hydride Occupation in BaVO3?xHx (0.3 <= x <= 0.8) with Face- and Corner-Shared Octahedra2018
Author(s)
Takafumi Yamamoto, Kazuki Shitara, Shunsaku Kitagawa, Akihide Kuwabara, Masahiro Kuroe, Kenji Ishida, Masayuki Ochi, Kazuhiko Kuroki, Kotaro Fujii, Masatomo Yashima, Craig M. Brown, Hiroshi Takatsu, Cedric Tassel, and Hiroshi Kageyama
-
Journal Title
Chemistry of Materials
Volume: 30
Pages: 1566-1574
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
-
-
-
-
[Journal Article] Crystal structure, site selectivity, and electronic structure of layered chalcogenide LaOBiPbS32017
Author(s)
Y. Mizuguchi, Y. Hijikata, T. Abe, C. Moriyoshi, Y. Kuroiwa, Y. Goto, A. Miura, S. Lee, S. Torii, T. Kamiyama, C. H. Lee, M. Ochi and K. Kuroki
-
Journal Title
Europhysics Letters
Volume: 119
Pages: 26002(1-5)
DOI
Peer Reviewed / Open Access
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-