2017 Fiscal Year Annual Research Report
極性錯体分子の異方的集積を利用した一次元金属窒化物の創成
Publicly Offered Research
Project Area | Synthesis of Mixed Anion Compounds toward Novel Functionalities |
Project/Area Number |
17H05485
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
大谷 亮 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 助教 (30733729)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 金属窒化物 / 配位高分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、ナイトライドアニオン(N3-)、シアノアニオン(CN-)から成る五配位構造の極性マンガン錯体分子 [MnN(CN)4]2- を最小単位として、室温で分子集積することで三種類の複合アニオン型一次元マンガン窒化物 C2[MnN(CN)4] (C = K, Na, Li) を合成し、その結晶構造解析、電子状態の決定に成功した。単結晶構造解析から全ての化合物でマンガン錯体分子がhead to tail で連結することで極性有する一次元鎖構造をとり、その一次元鎖が並列に配列した結晶構造を有していた。更に、単結晶構造解析から K2[MnN(CN)4] および Li2[MnN(CN)4] は一次元極性構造を有していた一方で、Na2[MnN(CN)4] は極性を打消しあった構造であった。得られた極性構造については、粉末試料を用いた第二次高調波発生(SHG)測定からも確かめられた。また、特に K2[MnN(CN)4] の状態密度計算により一次元鎖方向にバンド構造ができており、一次元鎖間は錯体分子の性質を示すことが明らかとなった。単結晶の色に着目すると、K2[MnN(CN)4] は赤色、Na2[MnN(CN)4] は青色を示し、この色の違いについて反射スペクトル測定を用いて検討した。その結果、一次元鎖を構築している分子間相互作用の違いによりシアノアニオンの配位角度が異なることで、中心金属であるマンガンイオンのd軌道準位が変化し、異なるエネルギーでd-d遷移を示していることが明らかとなった。また、粉末ペレットを用いたインピーダンス測定からは、一次元鎖間に取り込まれた水分子によるプロトン伝導を示すことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
三種類の複合アニオン型一次元マンガン窒化物の合成と構造解析に成功した。特に、Li塩に関しては、潮解性が大きいために解析が難しいと考えていたが、測定条件を工夫することで結晶構造が得られたことは、今後の物性評価を進めるうえで大きな結果であると考えている。また、基礎情報としての電子状態をはっきりと決めることができたことも、今後につながる重要な知見である。以上より、当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、単結晶試料を用いた骨格の強誘電性や、プロトン伝導の整流性といった極性構造を生かした機能開拓を行っていくと同時に、中心金属を Cr に変えることで磁気的性質の発現を狙い新規複合アニオン型一次元窒化物の合成を行っていく予定である。
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Research Products
(9 results)