2017 Fiscal Year Annual Research Report
Design of new mixed-anion 2D square-lattice magnets showing unusual magnetic states
Publicly Offered Research
Project Area | Synthesis of Mixed Anion Compounds toward Novel Functionalities |
Project/Area Number |
17H05493
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
辻本 吉廣 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 主任研究員 (50584075)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 複合アニオン / 酸ハロゲン化物 / 高圧合成 / 層状化合物 / 低次元磁性 |
Outline of Annual Research Achievements |
3d遷移金属の高原子価イオンはその深いd準位のため,酸素の2p軌道と強い軌道混成を形成すると同時に,酸素にリガンドホールと呼ばれる特異な状態が現れる.この状態は通常のバンドモデルでは説明できない新奇な電気伝導性,磁気状態の発現に導き,多くの複合酸化物において研究されている.本年度に注目した物質は高原子価Cr4+からなるペロブスカイト物質SrCrO3である.SrCrO3は常磁性金属であり,低温まで長距離磁気秩序しないことが知られている.一方,SrからLaに置換したLaCr3+O3は反強磁性絶縁体となる.両者の電気磁気物性が大きく異なることから,双方が競合するCrの価数で非自明な状態が現れることが期待される.これまでに,カチオンだけでなくアニオン置換による価数変化を伴った物性変化が研究されているが,どれもLaCr3+O3を出発点とした化学置換に限られる.一方で,Cr4+サイドの物性探求が進んでいないが,その大きな理由はCr4+を含有する化合物の難しさが挙げられる. 当グループは高原子価の合成に効果を発揮する高圧合成装置を有しているため,SrCrO3のフッ素化を行うことによってCr4+サイドから物性変化を調べた.異なるフッ素量を含むSrCrO3-xFx (0 < x < 0.5)を高圧合成によって作成し,その構造,電気・磁気物性を調べた.その結果,0.25 < x < 0.30を境に常磁性から反強磁性状態へ磁気状態が変化することが分かった.一方,金属状態はx = 0.1のわずかなフッ素ドープ量で絶縁体状態に変化した.構造については合成を行ったx = 0.5まで立方晶を維持しているが,x = 0.4と0.5については不純物が多く存在することから,基礎物性も含めて試料の質の改善が必要である.現在,磁気構造の解明,試料の質の向上,0.5 < xの組成の合成を検討している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在,粉末放射光X線回折法による精密構造解析,中性子回折実験による磁気構造解析を検討している.実験室系の粉末X線構造解析によるとすべての組成は立方晶で同定できる.しかし,x = 0.4, 0.5については未反応の不純物だけでなく,F量が異なることに起因すると考えられる相分離が見られるため,合成条件の検討を行っている. 現在,SrCrO3-xFx以外についても,層状Cr酸ハロゲン化物の合成についても検討しており,Sr2CrO3X (X = F, Cl)の高圧合成に成功している.磁化率測定でみるかぎり,両物質ともに磁気秩序の兆候を見せず,二次元磁性体の理想物質である可能性がある.これらの物質についても構造から物性まで詳細に調べる予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
初年度は,3次元構造をもつペロブスカイト物質に注目し,価数変化を伴う複合アニオン化により初めてSrCrO3の常磁性金属状態が反強磁性絶縁体状態へ変化するかを発見することができた.しかし,フッ素原子は酸素原子と似たX線,中性子散乱因子をもつため,X線,中性子回折実験では各アニオンの比の定量化は難しい.現在,放射光X線,中性子回折実験の計画を進めているが,O/Fの組成比を調べる手段としてX線吸収測定を計画しており,現在プロポーザルの提出準備中である.得られたすべての実験データを総合的に検討して,Fドープクロム酸化物の実態を明らかにする. また,合成に成功した層状クロム酸塩化物についても同様に構造解析を進め,磁気状態を詳細にするためにESR, NMR,さらに中性子回折実験を予定している.これらはCr三価の化合物であるが,今後,Cr4価へ価数変化させて電気・磁気物性の変化を詳細に調べ,ペロブスカイト物質の系との違いを精査することを検討している.
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] Synthesis, Crystal Structure, and Optical Properties of Layered Perovskite Scandium Oxychlorides: Sr2ScO3Cl, Sr3Sc2O5Cl2, and Ba3Sc2O5Cl22018
Author(s)
Yu Su, Yoshihiro Tsujimoto, Kotaro Fujii, Makoto Tatuda, Kengo Oka, Masatomo Yashima, Hiraku Ogino, and Kazunari Yamaura
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Journal Title
Inorganic Chemistry
Volume: 57
Pages: 5616-5623
DOI
Peer Reviewed
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