2017 Fiscal Year Annual Research Report
Idenfication of cell death-inducing signal in reactive oxygen species-induced necrosis
Publicly Offered Research
Project Area | Homeostatic Regulation by Various Types of Cell Death |
Project/Area Number |
17H05498
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
佐藤 伸一 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (20633134)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 活性酸素 / 細胞死 / タンパク質ラべル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
活性酸素(ROS)が関連するプログラム細胞死や炎症性疾患に関与する細胞死の誘導機構を同定・可視化するため、以下の2つのアプロ―チにより研究を行った。 1.細胞死抑制活性とタンパク質ラベル化能を併せ持つプローブの合成 昨年度の新学術領域公募班としての研究課題において、我々が独自に見出した一部のラジカル的なタンパク質ラベル化剤は細胞内で一電子を放出することで、ROS誘導性の細胞死に関わる酸化的なシグナルをクエンチし、細胞死を抑制することが分かっていた。そこで、それらの誘導体や既存のROS誘導性細胞死抑制剤の誘導体を種々合成し、細胞死抑制活性とタンパク質ラベル化能をモデル実験により評価した。両活性を併せ持つ化合物を合成した。 2.NET阻害剤の標的分子同定による細胞死制御機構の解明 好中球が感染時にROSを介して核内のクロマチンを細胞外に放出することが近年注目されている。このクロマチン網はneutrophil extracellular traps (NET)と呼ばれ、新たなタイプの細胞死として注目されている。そこで、本新学術領域内の共同研究者が見出したNET阻害剤の標的タンパク質同定を目指した。我々はタンパク質の化学修飾技術を応用した低分子化合物の標的タンパク質同定手法を独自に開発している。そこで、まず、標的同定のためのプローブを開発する上で、活性化合物の構造活性相関情報を取得した。見出されたNET阻害剤の誘導化合物について、入手、合成した。NET阻害剤に関する構造活性相関情報を得ることに成功し、標的同定研究に使用できるプローブを開発することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.細胞死抑制活性とタンパク質ラベル化能を併せ持つプローブの合成:この研究の目的は、上記のプローブを用いて、細胞死誘導刺激処理の細胞においてラベル化されるタンパク質を同定することである。細胞死抑制活性とタンパク質ラベル化能を併せ持つプローブの合成には成功したものの、過酸化水素を細胞死誘導刺激として加えた細胞内で顕著にラベル化されるタンパク質を同定するには至っていない。また、今回合成した一部の化合物は容易に酸化され易い構造であり、試薬としての安定性に欠ける等の欠点があった。よって、当初の平成29年度の達成目標であった細胞死誘導因子の候補タンパク質の同定までは至っていない。 上記に関してはうまくいっていないが、別アプローチとして、[2.NET阻害剤の標的分子同定による細胞死制御機構の解明]を試みた。 昨年度までの我々の別の研究課題において、生物活性低分子化合物の標的タンパク質同定に関する新手法を開発している。そこで、本領域内の低分子化合物を研究に用いている研究者との共同研究を新たに、開始した。共同研究が見出したNET阻害剤について誘導化を行い、活性を有する数種の化合物の取得、プローブ化に成功しており、この検討においては順調に研究が進行している。 よって、全体を通して、当初の想定通りではないものの、おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
1.細胞死抑制活性とタンパク質ラベル化能を併せ持つプローブの合成:引き続き、現在までに得られている化合物の誘導体化を行い、細胞死抑制活性とタンパク質ラベル化活性を評価することで、優れたプローブの開発を目指す。また、細胞死誘導因子の候補同定において、これまでは細胞死誘導刺激に過酸化水素を用いていたが、Erastin等のフェロトーシス誘導剤や他の細胞死修道刺激条件でも実験を行う。具体的には、アジド基、もしくはビオチンが連結されたプロ―ブを合成し、細胞死刺激時、非刺激時のラベル化タンパク質のバンドパターンを解析することで、プローブの有効性を評価する。特定のタンパク質が検出される場合には、質量分析によるタンパク質同定を行う。 2.NET阻害剤の標的分子同定による細胞死制御機構の解明:現在までに得られているNET阻害剤のプローブや、新たに合成する高活性化合物のプローブを用いて、アフィニティークロマトグラフィーや我々が独自に見出した低分子化合物の標的同定手法により、NET形成に関与するタンパク質性の細胞死実行因子同定を目指す。化合物のデザイン、合成を我々が担当し、合成した化合物の生物活性(NET阻害活性)は共同研究者が分担する。活性を持ったプローブを用いた結合タンパク質の実験については我々が行う。アフィニティークロマトグラフィーでの同定が困難な場合にも、低親和性、低発現量の標的タンパク質の検出が可能な我々独自の手法を適用し、活性化合物の標的同定を目指す。同定される候補タンパク質が細胞死実行因子であることの確認は分子生物学的手法により行う。
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