2017 Fiscal Year Annual Research Report
細菌含有膜破壊によるパイロトーシス誘導・制御メカニズムの解明
Publicly Offered Research
Project Area | Homeostatic Regulation by Various Types of Cell Death |
Project/Area Number |
17H05507
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山本 雅裕 大阪大学, 微生物病研究所, 教授 (00444521)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 非標準的NLRP3インフラマソーム / パイロトーシス / Caspase-11 |
Outline of Annual Research Achievements |
パイロトーシスは、インフラマソームの活性化により引き起こされる細胞死であり、病原体感染や自己免疫疾患など様々な宿主免疫応答に重要である。パイロトーシスは、微生物のPAMPや死細胞由来のDAMPなどの種々のリガンドを細胞内に存在するNod様受容体タンパク質(NLRP)やAim2あるいはCaspase-11といった受容体群が下流に存在するCaspase-1を活性化することで起きるが、実際には病原体の感染によって引き起こされるトキソプラズマやサルモネラなどの多くの病原体が形成する「病原体含有小胞」という膜構造体の破壊がその活性化のトリガーになる。病原体含有小胞膜を通して宿主から栄養を吸収し、その中で病原体は増殖し、やがて感染した宿主細胞が死ぬ結果、病気となる。そのような病原体に対してわれわれ宿主はインターフェロンに依存した免疫反応を起こし、病原体含有小胞を破壊して対抗するが、その免疫反応がどのように効率的に制御されているのかについては良く分かっていなかった。本研究で、正常細胞内では、インターフェロン誘導性の抗病原体因子GBPやIRGB10が細胞内に均質に配置すること、ゲノム編集で作製したGate-16欠損細胞ではGBPやIRGB10が細胞内で凝集し、トキソプラズマやサルモネラの病原体含有小胞上への蓄積率が低下し、病原体の効率的な排除が出来ないこと、ゲノム編集で作製したGate-16欠損マウスはトキソプラズマ感染に劇的に弱くなることを示した。さらにサルモネラ菌感染によるパイロトーシスを検討した結果、Gate-16のファミリー分子の欠損細胞で変化が見られた。以上のことから、本研究成果は、近年我が国においても症例報告が急増しているトキソプラズマ症やサルモネラを原因とする重篤な食中毒に対して、Gate-16という新たな分子を標的とした新規治療戦略を提供できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究成果をNature Immunologyに発表できたから。
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Strategy for Future Research Activity |
GBPやIRGB10は病原体含有膜に結合するが、ゴルジ体や小胞体などの膜には結合しない。そこで病原体含有膜およびゴルジ体・小胞体膜をショ糖密度勾配遠心法ならびにPercoll密度勾配遠心法を用いて分離し、質量分析装置を用いて膜に局在する分子群を網羅的に同定する。またGBP/IRGB10に結合する分子群を酵母ツーハイブリッド法または質量分析法により網羅的に同定し、病原体含有膜に存在する分子群と比較し、共有されているものがあるかを検討する。またGBPやIRGB10はそれぞれC末端とN末端にゲラニルゲラニル基とミリストイル基付加部位を有し病原体の含有膜に結合することから脂質成分の違いを認識していることも考えられることから、薄層クロマトグラフィーまたはLC-ESI質量分析装置を用いて細菌含有膜と自己オルガネラ膜の脂質成分の違いを比較し、最近含有膜に特異的な脂質成分があるかを探索する。病原体含有膜に特異的な分子が見つかった場合は、まずタンパク質の場合はその局在を免疫染色法で検討し病原体含有膜に多く存在することを確かめる。脂質の場合は局在を可視化するのが難しいため、その合成・代謝酵素の局在が病原体含有膜上に認められるかを検討する。近年の顕微鏡技術の発達により、旧来の共焦点顕微鏡では「共局在」と判断されていたものが、SIMなどの超解像顕微鏡においては近接しているが共局在していないという例も多数報告されていることから、場合によってはSIMを用いて細菌含有膜上、膜の内側、細菌細胞膜または細菌細胞質内に候補分子が局在するのかを詳細に区別し標的を絞り込む際に役立てる。
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