2017 Fiscal Year Annual Research Report
低分子化合物で探るマクロファージの炎症誘導性細胞死の機構
Publicly Offered Research
Project Area | Homeostatic Regulation by Various Types of Cell Death |
Project/Area Number |
17H05511
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
武田 弘資 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 教授 (10313230)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 細胞死 / 炎症 / 低分子化合物 / マクロファージ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、低分子化合物をツールとしてマクロファージの炎症誘導性細胞死の制御機構の解明を目指している。これまでに我々は、マウス初代培養マクロファージおよびマクロファージ様細胞に分化させたヒト単球由来THP-1細胞からのIL-1bの細胞外放出を指標に標的分子既知の低分子化合物をスクリーニングした結果、IL-1b放出を強力に抑制する複数の化合物を得ており、さらにそれらのすべてが、IL-1b放出と同時に起こるマクロファージの細胞死を強く抑制することを見出している。それらのうちSTAT3阻害剤WP1066は、STAT3に対する阻害作用とは独立してインフラマソーム活性化刺激によるマクロファージの細胞死を強く抑制することが分かった。その一方で、WP1066は既報通りグリオーマ細胞に対するアポトーシス誘導活性を示し、興味深いことに未分化THP-1細胞に対してもアポトーシス様の細胞死を誘導することが分かった。つまり、WP1066は細胞の状況に応じてまったく異なる作用(細胞死抑制 vs 細胞死促進)を示すことが明らかとなった。そのため、炎症誘導性細胞死の機構に絞って解析を進めるためには、複数の作用を持つことがデメリットになると考え、スクリーニングで得られた他の化合物の解析も行ってみた。その結果、WP1066と同程度の炎症誘導性細胞死抑制活性を有する3つの化合物のうち2つが、未分化THP-1細胞に対する細胞死誘導活性をもたないことが分かった。その2つの化合物のうち、標的分子に対する特異性が高いと予想される化合物について、類似化合物の収集ならびに合成展開を行ったところ、その化合物の標的として知られているプロテインキナーゼに対する阻害活性と炎症誘導性細胞死に対する抑制活性とが一致することが分かった。よってそのキナーゼが、マクロファージの炎症誘導性細胞死の新たな制御因子と予想された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では、WP1066の標的分子を探索する予定であったが、この化合物は、マクロファージ様細胞に分化させたTHP-1細胞ではインフラマソーム活性化刺激による細胞死を抑制するのに対し、未分化なTHP-1細胞に対しては単独の刺激で細胞死を誘導するという2つの相反する作用をもつ。そのため、標的分子探索に先立って、WP1066の類縁化合物から炎症誘導性細胞死に対する抑制活性のみをもつ化合物を取得する必要があった。実際、その作業も今後進める予定ではあるが、より早く重要な制御因子を同定することを目指し、WP1066とともに当初のスクリーニングで得られていた3つの化合物のアッセイも進めてみた。いずれもWP1066と同等の炎症誘導性細胞死に対する非常に強い抑制活性を示したが、それらのうちの2つの化合物は、好都合なことに、WP1066とは異って未分化なTHP-1細胞に対する細胞死誘導を有していなかった。その2つの化合物のうち、標的分子に対する特異性が高いと予想される化合物について、類似化合物の収集ならびに合成展開を行ったところ、その化合物の標的として知られているプロテインキナーゼに対する阻害活性と炎症誘導性細胞死に対する抑制活性とが一致することが分かった。よってそのキナーゼが、マクロファージの炎症誘導性細胞死の新たな制御因子と予想され、そのような因子の同定を目指していた当初の予定通りの進捗があったと判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に見出した候補分子についての解析を中心に進めていく。すでに、マウス腹腔由来マクロファージにおけるsiRNAを用いたノックダウン系を確立しており、その系を用いて候補分子の炎症誘導性細胞死における必要性を検討する。また、細胞死の機構については、現在、gasdermin D分子が関わるパイロトーシスと呼ばれる細胞死が主要な炎症誘導性細胞死と考えられているため、すでに作製済みのgasdermin DノックアウトTHP-1細胞を活用し、既知の細胞死の機構と、当該候補分子に依存した細胞死との関連も探って行く予定である。さらにマウス炎症モデルに対する効果の検討に加え、WP1066については、炎症誘導性細胞死に対する抑制活性のみを有する近縁化合物を見出すと同時に、マクロファージの細胞死感受性がマクロファージの活性化状態に応じてどのように変化するかの解明にも応用していきたい。
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Research Products
(15 results)
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[Journal Article] WP1066 suppresses macrophage cell death induced by inflammasome agonists independently of its inhibitory effect on STAT3.2017
Author(s)
Honda, S., Sadatomi, D., Yamamura, Y., Nakashioya, K., Tanimura, S., Takeda, K.
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Journal Title
Cancer Science
Volume: 108
Pages: 520-527
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Structures of PGAM5 provide insight into active site plasticity and multimeric assembly.2017
Author(s)
Chaikuad, A., Filippakopoulos, P., Marcsisin, S. R., Picaud, S., Schroder, M., Sekine, S., Ichij, H., Engen, J. R., Takeda, K., Knapp, S.
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Journal Title
Structure
Volume: 25
Pages: 1089-1099
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Journal Article] ASK1 facilitates tumor metastasis through phosphorylation of an ADP receptor P2Y12 in platelets.2017
Author(s)
Kamiyama, M., Shirai, T., Tamura, S., Suzuki-Inoue, K., Ehata, S., Takahashi, K., Miyazono, K., Hayakawa, Y., Sato, T., Takeda, K., Naguro, I., Ichijo, H.
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Journal Title
Cell Death and Differentiation
Volume: 24
Pages: 2066-2076
DOI
Peer Reviewed
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