2017 Fiscal Year Annual Research Report
水酸化酵素Phdの新規基質の同定を基盤とした低酸素応答システムの解明
Publicly Offered Research
Project Area | Oxygen biology: a new criterion for integrated understanding of life |
Project/Area Number |
17H05523
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
中山 恒 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 准教授 (10451923)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 低酸素応答 / Phd / 代謝制御 / PDC / 腫瘍形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞は低酸素環境では、エネルギー代謝を解糖系に依存した状態へと変化させる。この代謝変化にはピルビン酸脱水素酵素PDCが関与している。PDCの低酸素下での活性制御にはPDCキナーゼの働きを介したPDCのリン酸化が重要であることがこれまでに報告されていた。まず、低酸素下でのPDCの活性制御機構の解析に着手して、PDCの発現が長期的な低酸素培養で減少することを明らかにした。さらに、この発現低下にはミトコンドリアマトリクスのプロテアーゼが作用していることを、ノックダウン実験により明らかにした。そこで、この発現低下の意義を追究するために、PDCをshRNAで構成的にノックダウンした細胞株を樹立したところ、この細胞はTCA回路の活性が顕著に低下しており、高度に解糖系に依存した典型的な低酸素性の代謝状態を示すことが明らかになった。さらに、PDCが産生するacetyl CoAの量もこのノックダウン細胞内では低下していることが明らかになった。この低酸素様の代謝状態ががん細胞の腫瘍形成能にどのような影響を示すのかを検証するために、PDCをノックダウンした乳がん細胞株を免疫不全マウスに移植したところ、その腫瘍形成能が有意に低下していることが明らかになった。したがって、PDCの発現が低下することによって形成される解糖系に依存した代謝状態は、がん細胞の腫瘍形成能には抑制的に働くことが示された。現在、PDCノックダウン細胞において、低酸素応答シグナルがどのように変化しているのかの解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
低酸素環境における代謝状態の解析、ならびに、そのがんにおける役割の解析を行い、研究成果を論文発表することができた。また、Phdの新たな基質の候補分子を、質量分析計を用いて探索して、絞り込みを進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
Phdの水酸化基質の探索をさらに進めて、低酸素応答に働く新たなシグナル経路の同定をめざす。今年度の研究成果に基づき、特に低酸素下での代謝変化に着目し、Phd3が低酸素下で代謝調節に関与する可能性を、PDCとの相互作用の変化に焦点を当てながら解析する。さらに、PDC活性の低下によりacetyl CoA量が減少することを見出したことから、低酸素性の細胞内事象の変化をタンパク質のアセチル化状態を解析することで明らかにしたい。
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[Book] 細胞2018
Author(s)
榎本 峻秀、中山 恒
Total Pages
2
Publisher
ニューサイエンス社
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