2017 Fiscal Year Annual Research Report
新規ポリサルファ応答性転写因子による低酸素誘導型光合成の制御
Publicly Offered Research
Project Area | Oxygen biology: a new criterion for integrated understanding of life |
Project/Area Number |
17H05524
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
増田 真二 東京工業大学, バイオ研究基盤支援総合センター, 准教授 (30373369)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 硫化水素 / 活性イオウ分子種 / 低酸素 / 光合成 / 紅色細菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、申請者らが近年、ミトコンドリア祖先菌と同種の紅色細菌から同定した活性イオウ分子種応答性転写因子SqrRに着目し、硫化水素に依存して光合成遺伝子発現が調節される仕組みを解析することで、紅色細菌/ミトコンドリアが行う硫化水素代謝・活性イオウ分子種依存的なシグナル伝達の素過程を解明することである。更にその情報を、活性イオウ分子種インジケータの開発など合成生物学を見据えた応用研究へ展開する。
紅色細菌からSqrRを精製できる系の確立を進めてきた。これまでに、メガプライマー法を利用して、FLAGエピトープタグを融合したsqrR遺伝子を紅色細菌内で発現させる組換え体を得ている。H29年度は、この組換え体からのSqrR精製の系の確立を目指した。何度かの試行錯誤の結果、その生成系の立ち上げに成功した。また、紅色細菌に硫化水素を添加した際、実際に細胞内でどのような硫化水素代謝が働いているのか、またはどのような硫化水素依存的な代謝物が存在しているのかを、LC-ESI-MSにより調べることを試みた。具体的には、本研究領域計画班、東北大学赤池研究室の協力を受け、紅色細菌内の活性イオウ分子種の定量解析に向けた共同研究を行い、予備的実験結果の取得に成功した。さらに、GFP等の蛍光タンパク質やルシフェラーゼ等の発光タンパク質と組み合わせ、リアルタイムイメージングを見据えた活性イオウ分子種インジケータタンパク質の開発を進めた。これまでに、GFPとYFPを融合させた組み換えSqrR遺伝子の発現系構築に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1 SqrRの遺伝学的・生化学的解析:紅色細菌からSqrRを精製できる系を作出を進めた。これまでに、メガプライマー法を利用して、FLAGエピトープタグを融合したsqrR遺伝子を紅色細菌内で発現させる組換え体を得ている。H29年度は、この組換え体からのSqrR精製の系の確立を目指した。何度かの試行錯誤の結果、その生成系の立ち上げに成功した。
2 紅色細菌の活性イオウ分子種定量解析:前述したように、紅色細菌に硫化水素を添加すると、SqrRが分子内テトラサルファイド結合を形成し、その結果レプレッサーであるSqrRのDNA結合活性が弱まり、制御遺伝子の発現が上昇すると考えられている。しかしSqrRのシステインの詳しい修飾様式はわかっていない。そこで、紅色細菌に硫化水素を添加した際、実際に細胞内でどのような硫化水素代謝が働いているのか、またはどのような硫化水素依存的な代謝物が存在しているのかを、LC-ESI-MSにより調べることを試みた。具体的には、本研究領域計画班、東北大学赤池研究室の協力を受け、紅色細菌内の活性イオウ分子種の定量解析に向けた共同研究を行い、予備的実験結果の取得に成功した。
3 SqrRを用いたリアルタイムイメージング用活性イオウ分子種プローブの開発:SqrRは12 kDa, 110アミノ酸残基の非常に小さなタンパク質であること、またシステインの架橋が分子内で架かる利点を利用し、GFP等の蛍光タンパク質やルシフェラーゼ等の発光タンパク質と組み合わせ、リアルタイムイメージングを見据えた活性イオウ分子種インジケータタンパク質の開発を行う。これまでに、GFPとYFPを融合させた組み換えSqrR遺伝子の発現系構築に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
1 SqrRの遺伝学的・生化学的解析:H29年度までに、作成したFLAGエピトープタグを融合したsqrR遺伝子を紅色細菌内で発現させる組換え体を用いて、この組換え体からのSqrRを精製したところ、ヘムと思われる色素が結合している可能性が示唆された。H30年度は、この点を明らかにすべく、精製法の改善を進め、より高精純度のタンパク精製を進める。
2 紅色細菌の活性イオウ分子種定量解析:H29年度までに、本研究領域計画班の一つ、東北大学赤池研究室の協力を受け、紅色細菌内の活性イオウ分子種の定量解析に向けた共同研究を行い、予備的実験結果の取得に成功している。H30年度は、この共同研究を本格的に推し進め、各種培養条件、変異バックグラウンドなどの条件を変えた定量実験を遂行する。
3 SqrRを用いたリアルタイムイメージング用活性イオウ分子種プローブの開発:これまでに、GFPとYFPを融合させた組み換えSqrR遺伝子のデザインを終了している。今後、このタンパク質遺伝子の発現、精製の系を立ち上げ、精製後、その分光学的解析を行う。その結果を受け、組み換え遺伝子の改良を行う。
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