2017 Fiscal Year Annual Research Report
低酸素・活性酸素種・レドックス活性を捉える in vivo 可視化プローブの創製
Publicly Offered Research
Project Area | Oxygen biology: a new criterion for integrated understanding of life |
Project/Area Number |
17H05528
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
近藤 輝幸 京都大学, 工学研究科, 教授 (20211914)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 先端医工学 / 分子イメージング / 分子プローブ / MRI / ホスホリルコリン / 安定同位元素 / 2-ニトロアゾール / 放射線増感剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、低酸素応答性および放射線増感機能性を併せ持つ2-ニトロイミダゾール(2-NI)と、三重共鳴 NMR シグナル発信部位である 13C/15Nを二重ラベル化したホスホリルコリンとの複合化により、腫瘍低酸素領域に集積する新しい「セラノスティック」プローブ 13C/15N-NIPC を合成し、その機能について検討した。2-NIとTBDMS基で保護したブロモアルコールとの反応を行った後、脱保護し 2-NI のアルコール体を合成した。さらに、ホスホロアミダイト法を用いて、13C/15N-二重ラベル化塩化コリンとの反応により、13C/15N-NIPCプローブを合成した。 まず、13C/15N-NIPCプローブの放射線増感効果をコロニー形成法により評価した。低酸素条件下(0.3% 酸素濃度)において、13C/15N-NIPCプローブを投与したヒト肺癌細胞群A549(5000 cells)に X 線を照射した結果、13C/15N-NIPCプローブ未投与の細胞群に比べ、細胞生存率が著しく低下した。この結果は、13C/15N-NIPCプローブが、低酸素細胞に対する有効な放射線増感効果を有することを示しており、腫瘍低酸素領域におけるセラノスティックプローブとしての可能性を示している。次に、13C/15N-NIPCプローブを投与したA549細胞を低酸素環境下で培養、インキュベート、洗浄した後、細胞抽出液の三重共鳴 NMR測定を行った。その結果、13C/15N-NIPCプローブのメチル基1Hのシグナル(1H-13C-15N, 3.13 ppm)のみが高選択的に検出された。 生体への実応用には、検出感度や低酸素細胞への集積性、放射線増感効果の更なる改善が必要であるが、本研究では、腫瘍の「診断」と「治療」を同時に実現するセラノスティックプローブの開発が可能であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、研究代表者が開発した「分子標的 MRI 法」を活用し、生体深部における腫瘍低酸素環境、活性酸素種、およびレドックス活性を「その場」で画像モニタリング(可視化)できる革新的磁気共鳴イメージングプローブの創製を目的とする。 平成29年度は、当初の計画通り、腫瘍低酸素領域に集積する新しい「セラノスティック」プローブ 13C/15N-NIPCの合成に成功した。また、13C/15N-NIPCプローブが低酸素細胞に対し、高い放射線増感効果を有すること、および三重共鳴 NMR測定により、細胞夾雑物が多数存在する系においても13C/15N-NIPCプローブのみを高選択的に検出できることを明らかにした。現在、担癌マウスを用いて、13C/15N-NIPCプローブのex vivoおよびin vivo機能評価を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の方針としては、研究代表者が開発した生体適合性に優れ高選択的に腫瘍部位に集積するホスホリルコリンポリマー(PMPC)のさらなる高度利用法の開発を目指し、活性酸素種(ROS)、およびレドックス活性のin vivo光音響イメージング(PAI)に有効な新しい分子プローブを開発する。具体的には、吸収波長が異なる2種類の近赤外蛍光色素(NIR色素)、すなわち「ROSと反応し、PA信号強度が変化(減少)するNIR色素」と「ROSと反応せず、PA信号強度が変化しないNIR色素」の両方をPMPCに導入し、PAIに有効な新規NIR-PMPCプローブを合成し、その機能評価を行う。 最終的には、研究代表者が開発した分子標的MRI法とPAI法を用いて、生体内のROSとレドックス活性の「定量的」画像化を実現する。
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Research Products
(9 results)