2017 Fiscal Year Annual Research Report
記憶学習において作動する神経回路の遷移
Publicly Offered Research
Project Area | Mechanisms underlying the functional shift of brain neural circuitry for behavioral adaptation |
Project/Area Number |
17H05545
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
谷本 拓 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (70714955)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | 神経情報処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
ショウジョウバエの匂い連合学習では、記憶の獲得・保持・読み出しの過程を明確に区別でき、その全ての過程がキノコ体と呼ばれる単一の脳構造で処理される。本研究では、記憶の素過程を定義するキノコ体出力神経の機能パターンと、その遷移を理解することを目的とする。研究代表者らの研究グループは、キノコ体の出力を担う21種類の出力神経を全て同定した。つまりキノコ体は、全ての神経種が遺伝学的に標識でき、機能操作と行動出力との因果関係を明らかにすることができる独自のモデル回路である。本研究ではこの遺伝学的リソースを用い、キノコ体の出力を構造と機能の両面から解析する。 2017年度は、全ての出力神経の細胞種を同一の三次元画像上で比較し、キノコ体出力神経の投射領域の相対的な位置関係を網羅的に明らかにした。具体的には、各出力神経に細胞膜マーカー、前シナプスマーカー、後シナプスマーカーを発現させ、各細胞の詳細なシナプスの位置を可視化した。共焦点レーザー顕微鏡により取得した複数細胞種の三次元画像を、脳のランドマーク構造に基づいて数学的に重ね合わせた。これを全ての細胞種に対して行うことで、同一画像上に全ての出力神経をマップした。神経伝達物質や入出力部位などの情報と併せて解析することにより、キノコ体の各区画からどのような情報が出力されるのか、さらには収束、発散、ループなどの構造的な特徴を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
学習実験装置に不測の不具合が生じ、原因の所在の探索、実験装置の修理・部品取り寄せ、実験条件の再調整などに時間を要したため、当初の予定よりも進捗が遅延した。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度に構築したキノコ体出力神経マップをもとに、記憶の獲得、保持、読み出しという過程において、全てのキノコ体出力神経の「貢献度」を測定することで機能コードを明らかにし、素過程間での多様性を定量化する。さらに機能コードを出力地図に投射し、構造的特徴と統合することで、記憶において作動する神経回路の遷移を包括的に理解する。
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Research Products
(11 results)