Publicly Offered Research
本研究では、解剖学的および生理学的にヒトに近縁のマカクザルを用いて、脊髄損傷後の前頭葉運動関連領野でみられる可塑的変化を形態学的に明らかにし、機能回復の中枢メカ二ズムに迫ることを目的としている。具体的には、健常個体と脊髄損傷後の急性期と慢性期における運動関連領野(特に一次運動野、運動前野、補足運動野)の樹状突起および樹状突起スパインの形態変化と運動機能回復との相関について検討する。平成29年度は、特に「大脳運動関連領野における錐体細胞の樹状突起と樹状突起スパインの形態学的解析」を中心に研究計画を遂行し、まず健常個体において皮質内微小刺激法により同定した一次運動野、補足運動野、運動前野背側部および腹側部の4つの運動関連領野の手指領域を対象にして、ゴルジ染色法を用いて、皮質脊髄路の起始ニューロンである各領野の第V層巨大錐体細胞の樹状突起と樹状突起スパインの形態を解析した。樹状突起については、Sholl analysisによりその形態(複雑さ)を解析し、樹状突起スパインについては、細胞体から20 μmに位置するスパイン数をカウントすることによりその局在分布を解析するとともに、形状を5種類(filopodia、thin、stabby、mushroom、branched types)に分類し、成熟スパインか未成熟スパインかを判定した。現在、得られた実験データの解析を進めており、これらのパラメータを適用することにより、運動関連領野間における皮質脊髄路の起始ニューロンの形態学的差異が明らかになりつつある。また、「脊髄損傷後の機能回復と錐体細胞の樹状突起・スパイン動態の相関解析」についても、脊髄損傷後の急性期(約10日後)における樹状突起・スパインの形態変化の解析に関する実験をスタートした。なお、運動機能の回復過程における行動評価については、手指の巧緻性を定量的に評価できるreaching/grasping taskを用いた。
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
平成29年度は、特に「大脳運動関連領野における錐体細胞の樹状突起と樹状突起スパインの形態学的解析」を中心に研究計画を遂行し、健常個体で一次運動野、補足運動野、運動前野背側部および腹側部の4つの運動関連領野間における第V層巨大錐体細胞(皮質脊髄路の起始ニューロン)の形態学的差異が明らかになりつつあるとともに、「脊髄損傷後の機能回復と錐体細胞の樹状突起・スパイン動態の相関解析」についても、脊髄損傷後の急性期(約10日後)における樹状突起・スパインの形態変化の解析に関する実験をすでにスタートしており、全体として研究が極めて順調に進展していると考えられるため。
平成29年度に実施した「大脳運動関連領野における錐体細胞の樹状突起と樹状突起スパインの形態学的解析」に関する研究計画を継続し、健常個体で一次運動野、補足運動野、運動前野背側部および腹側部の4つの運動関連領野間における第V層巨大錐体細胞(皮質脊髄路の起始ニューロン)の形態学的差異を明らかにするとともに、「脊髄損傷後の機能回復と錐体細胞の樹状突起・スパイン動態の相関解析」についても、脊髄損傷後の急性期(約10日後)と慢性期(約3ヶ月後;機能回復後)における樹状突起・スパインの形態変化を解析し、脊髄損傷モデルで得られたデータを健常個体で得られたデータと比較することにより、脊髄損傷後の運動機能回復と個別の運動関連領野における錐体細胞の可塑的変化との相関を明らかにする。また、「経頭蓋磁気刺激(TMS)治療による運動機能回復効果の解析」についても検討を開始し、可塑的変化が顕著にみられた運動関連領野に対してTMSを施行して運動機能回復の治療効果を検証する。
All 2018 2017 Other
All Journal Article (5 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results, Peer Reviewed: 5 results, Open Access: 4 results) Presentation (31 results) (of which Int'l Joint Research: 11 results, Invited: 2 results) Remarks (1 results)
Frontiers in Neuroanatomy
Volume: 12 Pages: 3
10.3389/fnana.2018.00003
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Volume: 29 Pages: 561~572
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http://www.pri.kyoto-u.ac.jp/sections/systems_neuroscience/index.html