2017 Fiscal Year Annual Research Report
Molecular mechanisms underlying functional recovery of cerebral neural circuits impaired by ischemic stroke
Publicly Offered Research
Project Area | Mechanisms underlying the functional shift of brain neural circuitry for behavioral adaptation |
Project/Area Number |
17H05577
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
坪井 昭夫 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (20163868)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 神経科学 / 脳・神経 / 脳神経疾患 / 再生医学 / 成体神経新生 / 脳梗塞モデルマウス / ニューロン細胞死 / 神経回路形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳血管障害は、本邦の死因の4位となる極めて発生頻度の高い疾患である。しかしながら、虚血により脳組織が一度損傷を受けると失われたニューロンを再生させる効果的な治療法は、未だ確立されていない。脳梗塞により血流が阻害されると、梗塞巣の内部では、酸素や栄養の不足により大多数のニューロンは死滅する。一方、梗塞巣の境界には、血流が低下しながらも細胞死を免れている領域が存在し、ここでのニューロンの細胞死を防ぐことが、臨床医学上の重要課題となっている。
申請者らは本研究において、中大脳動脈閉塞(MCAO: middle cerebral artery occlusion)を用いて脳梗塞モデルマウスを作製し、梗塞2時間後の大脳皮質における梗塞巣との境界領域(penumbra)で発現が変化する遺伝子を、RNAシークエンシング(RNA-Seq)によりスクリーニングした。そして、梗塞側のpenumbraで発現が増加する27個の遺伝子をin situハイブリダイゼーションにより絞り込んだ。これらの中でも、転写因子Npas4は大脳皮質における興奮性と抑制性のニューロンで顕著に発現誘導され、penumbraに沿うような発現パターンを示した。
また最近、申請者らは、健常脳での嗅球介在ニューロンの神経活動依存的なスパイン形成に、Npas4が必須の役割を果たすことを見出した(Cell Reports 8, 843, 2014)。そこで、本研究ではさらに、脳梗塞モデルマウスを用いて、梗塞直後に発現が誘導される転写因子Npas4やその関連因子に着目して解析した。その結果、Npas4やその関連因子は、健常時のみならず障害時においても、ニューロンの発達や生存を促進することで、神経回路の再構築に関与している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脳血管障害は、本邦の死因の4位となる極めて発生頻度の高い疾患である。しかしながら、虚血により脳組織が一度損傷を受けると、失われたニューロンを再生させる効果的な治療法は、未だ確立されていない。脳梗塞により血流が阻害されると、梗塞巣の内部では、酸素や栄養の不足により大多数のニューロンは死滅する。一方、梗塞巣の境界には、血流が低下しながらも細胞死を免れている領域が存在し、ここでのニューロンの細胞死を防ぐことが、臨床医学上の重要課題となっている。
そこで申請者らは、中大脳動脈閉塞(MCAO)手術の2時間後に、大脳皮質での梗塞巣の境界予定領域からRNAを調製して、RNA-Seq解析を行い、梗塞・再灌流の直後に発現が変化する遺伝子を網羅的に探索して、27個の候補遺伝子を見出した。これらの中でも、転写因子Npas4は大脳皮質における興奮性と抑制性のニューロンで顕著に発現誘導され、梗塞巣の境界に沿うような発現パターンを示した。また、Npas4欠損マウスにMCAO手術を施すと、野生型の場合と比較して梗塞巣のサイズが拡大し、予後の運動機能も顕著に悪化した。更に、MCAO手術直前に、健常マウスの脳でNpas4の発現を誘導させると、梗塞巣のサイズが縮小することを見出した。
これらの結果から、Npas4やその下流の遺伝子は、健常時のみならず障害時においても、ニューロンの発達や生存を促進することで神経回路の再編に関与している可能性が示唆されたので、今後のさらなる研究が期待される(申請者ら,投稿準備中)。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究においては、梗塞直後に発現が誘導される転写因子Npas4やその関連因子に着目して、梗塞後のニューロンの生死を左右し、神経回路の修復を制御する分子機構を、以下のように解析して、明らかにする。
1)野生型・Npas4欠損マウスにおける梗塞後のニューロンの生存率や形態の変化について解析する。 2)野生型・Npas4欠損マウスの梗塞後の運動機能について、行動実験により個体レベルで解析する。 3)脳梗塞によるニューロンの細胞死を抑制するようなNpas4の下流遺伝子を同定するために、Npas4欠損マウスにMCAO手術を施した脳サンプルについて、リアルタイムPCRやRNA-Seqを用いてスクリーニングする。 4)野生型・Npas4欠損マウスに関して、脳梗塞後の側脳室や梗塞巣に、レンチウイルスやアデノ随伴ウイルスを用いて、Npas4やその下流遺伝子を過剰発現させて、神経回路の再編を促進することで、その予後が改善されるかどうかを検討する。
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Research Products
(7 results)